2019 Fiscal Year Research-status Report
pDNAの高次構造制御を基盤とする構造化遺伝子キャリアの機能展開と学理創出
Project/Area Number |
17KK0102
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
長田 健介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主任研究員(任常) (10396947)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2020
|
Keywords | 薬物送達システム / 非ウイルス性遺伝子デリバリーシステム / 高分子ミセル / ポリイオンコンプレックス / DNA凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、DNAと高分子からなる複合体の高次構造制御とそれを遺伝子ベクターとして医療応用しようとする基研究を、ナノメディシンの臨床応用研究を進めるグループとの協議を通じてステップアップを図るとともに、生物物理学のグループと共同することで高次構造形成の基礎学術を深化させること、さらに新たな核酸治療システムを構築することを計画している。 2019年度は、R. Zentel/M. Barz研究室(マインツ大学、ドイツ)において生体親和性高分子としてこれまで用いてきたPEGに替わる新たな高分子の利用を検討し、その合成法を習得した。これは今後、材料設計において新たな選択肢として有意義であった。T. Schumidt博士(ドレスデン工科大学、ドイツ)と進めているDNAナノテクノロジーを活用した新たなmRNA輸送システムの開発については、細胞内に存在する酵素によって輸送体からmRNAを放出することをモデル実験で確認し、本プロジェクトの第一段目をクリアすることができた。また、生物物理を専門とするJ. Raedler教授(ミュンヘン大学、ドイツ)とDNA複合体の高次構造形成について協議した。この間、多方面の研究者と交流し、新たな研究ネットワークを構築した。 これらの研究交流を通じて、現在ナノメートルスケールでの生体構造に関する知見が大きく欠如しているとの考えに至り、核磁気共鳴画像法(MRI)を通じて非侵襲的にそれを検出するナノ造影剤の開発を新たに企図し、共同研究を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノメディシンの臨床応用研究を進めるグループとの交流を通じ、材料設計と適用疾患、実際のベンチャー企業とのトランスレーショナル研究体制を視察し、課題と将来性を共有した。この際、先方が進めている生体適合性高分子の有意性を認識し、その合成方法を習得した。これによって当方が進める研究に新たな材料設計の選択肢を加えることができた。また、DNAに代わる新たな核酸治療法として、DNAナノテクノロジーを基盤とするmRNAを使った細胞治療システムの構築を企画した。当初はDNAナノテクノロジー手法を使ってmRNAに高次構造をつくらせる計画であったが、DNAでmRNAを運ぶ“箱”をつくり、その中にmRNAを封入するという新たな戦略を立案した。現在までにmRNAを細胞内で放出させる系が実現できるかをモデル系で確認しており、次のステップとしてDNAで箱を作る設計に入っている。一方、ナノ医療の実用化を強力に推進している中国の状況を視察し、課題を共有することも行った。 以上の国際交流を通じて、ナノメディシンの次の課題として体内の構造をナノメートルスケールで知ることが必要との共通理解に至り、新たに高磁場MRIを用いて非侵襲的に生体ナノ構造を解析するという共同研究を立案するに至っている。 このように、当初予定していたミュンヘン大学との共同研究はコロナウイルスの影響により2020年度に延期となっているものの、その他の国際共同研究は当初計画通り進んでおり、加えて生体のナノ構造探索プロジェクトを新たに発案するなど、分野横断的な国際ネットワークを構築しつつ発展している。このことからおおむね順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
マインツ大学およびマックスプランク高分子化学研究所では、当方の開発する構造化遺伝子ベクターと先方の保有する実験系とのマッチングおよび高分子材料について引き続き協議するとともに、新たに企画したMRI用ナノ造影剤の開発を進める。具体的には、造影効果を持つ常磁性金属としてガドリニウムおよびマンガンを選択し、それを生体適合性かつ血中長期滞留性を有する高分子集合体に担持させたナノゲルの調製を試みる。一方、造影剤は水と接触することが必要であり、これには多孔質無機ナノ粒子が優れた特性を有している。これを実現するため、多孔質無機ナノ粒子を専門とするVISTEC(タイ国)のOgawa教授と共同研究を開始する。 DNAナノテクノロジーを基盤とするmRNA輸送体の開発は、当該共同研究者が2019年初頭に米国オハイオ州立大学ケントに移動したため、今後は米国にて共同研究を進める。モデル系を用いた実験で、DNAオリガミに結合させたmRNAを酵素切断により放出させることに成功したことから、次の段階として箱となるDNAオリガミの設計および調製へと進む。 また、2019年度末の滞在を延期していたミュンヘン大学とのDNA複合体の高次構造形成に関する基礎学術共同研究を、COVID-19の制約が解け次第開始する。
|
Research Products
(15 results)