2020 Fiscal Year Research-status Report
pDNAの高次構造制御を基盤とする構造化遺伝子キャリアの機能展開と学理創出
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17KK0102
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
長田 健介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主任研究員(任常) (10396947)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 非ウイルス性遺伝子ベクター / ポリイオンコンプレックス / DNA凝縮 / 薬物送達システム / 高分子集合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、DNAと正電荷性高分子からなる複合体の高次構造制御とそれを遺伝子ベクターとして医療応用しようとする基研究を、ナノメディシンの臨床応用研究を進めるグループとの協議を通じてステップアップを図る(課題(1))とともに、生物物理学のグループと共同することで高次構造形成の基礎学術を深化させること(課題(3))、さらに新たな核酸治療システムを構築すること(課題(2))を目的としている。 2020年度は、感染症の蔓延により海外の共同研究先に滞在し研究を進めることはできなかったが、この間、共同研究により取得した新規生体適合性材料合成を当研究室において開始するとともに、DNAオリガミ-mRNA複合体の作製およびタンパク複合体の高次構造形成についての検証を進め、共同研究課題の基盤を強固なものとした。また、本研究プロジェクトで構築した研究者ネットワークを通じて知り合った計算分野の研究者と、核酸-ペプチド複合体の形成プロセスをシミュレーションから検討する新たな国際共同研究を開始した。これにより基課題で行っている実験的検証を計算科学的に補強する強力な手段を得た。さらに、基課題で開発している遺伝子ベクターを用いた国際共同研究を開始した。これは基課題を研究段階に留めず実用化まで発展させるという本課題の目標達成において意義の大きい展開である。 このように本年度は海外渡航できなかったものの、国内にて研究基盤を固めるとともに、基礎・応用両方向で国際共同研究をさらに展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、マインツ大学のグループらと引きつづき共同研究を進めるとともに、ミュンヘン大学に滞在し、DNA-正電荷性高分子複合体の高次構造形成の物理に関する共同研究を開始する計画であった。しかしながら、感染症の蔓延により渡航することができなかったため、当研究室で実施可能な課題に注力した。具体的には、マインツ大学のグループが開発する新規生体適合性高分子の合成、DNA-正電荷性高分子複合体の構造形成を検討するための材料合成ならびに条件探索に取り組み、研究計画を大きく滞らせることなく遂行することが出来た。本年度はこれらに加え、DNA-正電荷性高分子複合体の会合挙動を計算科学からアプローチする国際共同研究をインド国立計算科学研究所のグループと新たに立ち上げ、実験的に検証困難な原子レベルにおける会合挙動の解析を行った。さらに、ミシガン大学医学部(米国)と循環器系疾患を標的に遺伝子ベクターの臨床応用に向けた共同研究を開始した。このように本年度は国内で実施可能な研究を精力的に進める一方、本国際共同研究加速基金の援助により構築した研究者ネットワークを活用して新たな共同研究を開始することで、基礎・応用両面で本研究の目的達成に向け前進できた。特にミシガン大学医学部との共同研究は、基課題で開発した遺伝子ベクターを国際的な取り組みを通じて実用化まで発展させようとする本国際共同研究の目標達成に向け大きな前進となった。以上のことから、おおむね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、20年度に着手した生体適合性の新規親水性高分子の重合技術の確立を目指すとともに、計算科学から核酸-正電荷性高分子間の会合挙動を解析し、核酸により強く結合する正電荷性高分子の分子構造を探索する。これらを通じて、生体安定性のより高い遺伝子ベクターの開発につなげていく。一方、臨床応用を見据えたトランスレーション研究(課題1)については、基課題で開発した遺伝子ベクターを用いた循環器疾患に対する治療実験を進め、最適となる遺伝子ベクター形態、投与法、治療遺伝子の組み合わせを同定する。これにより治療戦略を確立し、前臨床応用に向けた展開を加速化する。DNAオリガミを用いたmRNA送達システムの創成(課題3)については、DNAオリガミに結合させたmRNAを酵素切断により放出させることに成功したことから、研究を細胞での実証試験にフェーズを移す。具体的には、細胞内環境に応答してふたが開き、mRNAが出てくるナノボックスをDNAオリガミで作製、その効果の検証を行う。他方、DNA-正電荷性高分子複合体の多様な高次構造の形成原理を探究する基礎学術研究(課題2)に関しては、その固体的集合体-液体的集合体の形成条件を同定、相図としてまとめるとともに、内部のナノ構造解析およびダイナミクスの計測を行うことを計画している。これにより、DNA-正電荷性高分子複合体の形成原理から細胞内における核酸-正電荷性ペプチド複合体の機能創発にアプローチする。これらの計画により、基課題の臨床応用に向けたトランスレーション研究を加速化するとともに、新規DNAおよびmRNA送達システムの開発およびDNA複合体の構造形成の理解を深化させ、本研究課題の目標達成を目指す。
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Research Products
(12 results)