2019 Fiscal Year Research-status Report
改変型プレニル基転移酵素による新規抗菌活性分子探索法の開発
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17KK0141
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松井 崇 北里大学, 理学部, 講師 (30463582)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | タンパク質相互作用 / 質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
新興再興感染症は、現在進行中であるコロナウイルスをはじめ、公衆衛生にとどまらない世界的な社会問題となっている。ウイルス感染症だけではなく、既存薬の効果が抑制され始めている細菌感染症においても、今後、感染者の増大が予測されており、2050年には、ウイルスや細菌を含む感染症全体の死傷者数はガン死者数を超えると予測されている。そこで、既存薬とは異なる標的分子に対する標的薬の必要性が叫ばれている。本研究では、院内感染症の原因細菌のひとつである黄色ブドウ球菌等に対し、既存薬とは異なる機構である細菌の細胞分裂に必須なタンパク質で自己重合により細胞分裂を制御するFtsZを標的分子とし、FtsZの自己重合・脱重合機構による細胞分裂を抑制する化合物探索を目的とする。 本研究の基課題では、化合物に抗感染症や抗腫瘍等の生物活性を付与できるプレニル基転移酵素の立体構造情報から合理的に基質触媒機能を拡張することで、有用な化合物を生産する研究を進めてきた。そこで、クライオ電子顕微鏡によって、タンパク質分子の挙動を観測することにより、改変酵素で調製した化合物からFtsZの機能を阻害する分子の同定とその分子機構の解明することを考え、下記の研究を進めてきた。 2018年度では、ドイツ・マックス・プランク研究所にてクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析を用いたタンパク質分子の構造解析の習得とその解析環境の構築を目指し、その過程でスルメイカヘモシアニンの立体構造決定に成功した。 2019年度は、クライオ電子顕微鏡で構造を観察するまえに、予めFtsZの自己重合を検出可能な測定系の確立を目指した。自己重合の検出には、微量試料での検出も可能な質量分析計を用いることを考えた。そこで、まずはじめに、標準試料を用いて質量分析計によるタンパク質分子の相互作用や構造変化の検出に向けた条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦にある希少なクライオ電子顕微鏡のマシンタイムを有効に活用するためには、予めクライオ電子顕微鏡用の試料が測定に適しているか事前に確認できることが望ましい。本研究では、化合物を添加した場合に、自己重合FtsZからなる繊維が時間に依存せず強固な繊維状態を保つことを他の方法で予め知ることによって、測定試料が電子顕微鏡解析に適しているか事前に判断できる。一般には、動的光散乱などの分析機器を用いるが、用意できる化合物量は極微量のため、高感度・低量で測定する必要がある。 そこで、本年度は、極微量な試料量で分析可能な質量分析計を用いることで、試料の構造状態を予め推測できるようにする測定系の構築を目指した。本測定系を構築するために、標準試料として複数の市販されているいつくかのタンパク質を用いた。はじめに、同一タンパク質の複合体試料と単量体試料をそれぞれ別に異なる分子量となるように化学修飾した。その後、就職分子量の強度の違いをタンパク質構造上にマッピングする手法により、ngオーダーの微量試料量でも相互作用を含む構造情報を得られる測定法を確立した。現在、より再現性良く、より微量な試料量で測定できるように改善を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に構築した質量分析計による構造情報の取得法を用いて、黄色ブドウ球菌FtsZや緑膿菌FtsZに対して脱重合阻害能を持つ新規抗菌活性分子を探索する。さらに、脱重合阻害する化合物と混合したFtsZ試料は、2018年度に構築した構造解析環境を用いてクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析を進め、阻害分子と原子レベルでの阻害機構の同定を目指す。 一方、コロナウイルス等の影響により、上記に記載したウエットな実験計画を予定通り遂行できない可能性も考えられる。その場合は、Docking simulationや分子動力学計算を用いた阻害分子の結合可能性試験をin silicoで事前に確認する等、これまでとは異なる手法を利用した研究推進の手段も講じ、研究を推進していく予定である。
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[Presentation] 包括的な物性解析によって見えてきたハブ毒蛋白質のSDSによる多量体化2019
Author(s)
松井崇, 鎌田しずか, 石井健太郎, 丸野孝浩, Ghanem Nouran, 内山進, 加藤 晃一, 鈴木淳巨, 上田直子, 小川智久, 田中良和
Organizer
日本プロテオーム学会2019年大会 第70回日本電気泳動学会総会
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