2018 Fiscal Year Research-status Report
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17KT0001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
竹澤 正哲 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (10583742)
鈴木 麗璽 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (20362296)
松本 晶子 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (80369206)
犬飼 佳吾 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (80706945)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 集団間葛藤 / 協力 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化的集団淘汰仮説は、人類史において集団間の争いが人間の協力性を発達させたと主張する。本研究は、この仮説を批判的に検討し、紛争問題解決のための示唆を得るため、次の3つの問題を検証する。(1)社会において協力が成立するためには集団間葛藤が必須であるのか、(2)集団間葛藤が無くとも協力が成立するならばそのために必要な要件は何か、(3)(2)の要件の下で、個人はどのような過程により協力をするか否かの意思決定を行うのか。この目的のために本研究では、人間の協力性が成立する要件について、文化的集団淘汰仮説を進化学・人類学・思想史の観点から批判的に検討して仮説群を抽出し、それを心理学・認知神経科学に基づく実験的研究、生物人類学に基づく動物フィールド研究、数理モデルによるシミュレーションにより多角的に検討することを目指している。 実験研究においては、紛争と協力の背景メカニズムとして社会的規範への追従性があり、さらにその背後には利得や損失への敏感性があるという仮説の検証のため、行動データから意思決定メカニズムを記述する計算論的モデルのパラメータを推定し、安静時fMRIとMRSによりその神経基盤を検討した。この結果、島皮質と線条体の活動が、利得と損失、また規範への追従性の共通基盤であることが明らかになった。 フィールド研究では、ヒヒ集団内の協力である群れ外縁部での位置取りは若いオス個体により主として担われること、これらの個体では瞬目頻度が低く監視のため周囲の注視を持続していることが明らかになった。 シミュレーション研究では、協力関係の変移を明らかにするため、社会的関係の近さを表現する抽象空間上を、個体が囚人のジレンマに基づく利得に応じて移動する社会的粒子群モデルにより検討した。さらに、このモデルに準じた状況設定を想定したオンライン実験フレームワークを構築し、10~20名を対象に実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載したように、下記の成果が得られた。1)実験研究では、基礎的意思決定と社会的意思決定に関する実験課題を確立し、そこにおける行動と神経基盤に関するデータを収集する研究を完了した。そこにおけるデータの解析により、両者の意思決定に共通するメカニズムと神経基盤に関する知見を得ることに成功した。2)フィールド研究では、ヒヒ集団の観察から集団内協力に関する興味深い知見を得、論文として公刊することができた。また、ヒヒ集団間の相互作用を観察する研究の準備も進行しつつある。3)シミュレーション研究では、前年度に開発したモデルをさらに拡張し、一万体に及ぶエージェントを同時に動かし、さらに個々のエージェントに強化学習則に基づく行動原理を組み込んで、協力の生起メカニズムを検討することに成功した。これらの知見の一部は、既に査読付き学術論文として公刊されつつある。これらの研究成果は、次年度にさらに発展させうると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)実験研究においては、平成30年度において得られた知見と獲得した技術を基盤として、集団内協力と集団間葛藤をより直接的に検討可能な実験課題を新たに開発し、平成30年度と同様な神経画像技法を用いてその神経基盤を検討する。2)フィールド研究では、複数のヒヒ集団を対象とし、集団間の相互作用と集団間の協力の実態を観察する研究を行う。3)シミュレーション研究では、平成30年度に開発したモデルにさらにパラメータを追加し、より現実的なモデルに洗練する。また、各パラメータを段階的に変化させてシミュレーションを繰り返し、社会における協力が生起する条件を探索する。
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Causes of Carryover |
研究分担者・松本が行う、アフリカ・サバンナのヒヒを対象としたフィールド研究において使用するGPS装置の開発に時間を要したため、平成30年度に行う予定であった研究の一部を平成31年度にまわしたため。また研究分担者・曽我は平成30年度の研究準備に時間を要し、研究の実施を平成31年度にまわたしため。
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[Journal Article] Commitment-enhancing tools in Centipede games: Evidencing European? Japanese differences in trust and cooperation2018
Author(s)
Krockow, E. M., Takezawa, M., Pulford, B. D., Colman, A. M., Smithers, S., Kita, T., & Nakawake, Y.
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Journal Title
Judgment and Decision Making
Volume: 13
Pages: 61-72
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Book] 遊牧の思想2018
Author(s)
曽我亨・太田至
Total Pages
38(担当章)
Publisher
昭和堂
ISBN
9784812218242