2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of pathogenic mechanism of chronic inflammation
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17KT0055
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長谷 耕二 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (20359714)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | ディスバイオーシス / リーキーガット |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌叢のバランスに異常をきたすと、炎症性腸疾患や大腸癌などの消化器疾患に加えて、アレルギーや自己免疫性疾患、さらには精神性疾患や生活習慣病といった全身性の疾患が誘導されることが示唆されている。このような腸内細菌のバランス失調は『ディバイオーシス(dysbiosis)』と呼ばれる。ディスバイオーシスは各種疾患の発症に関わる鍵因子であると想定されているが、その病態メカニズムには不明な点が多い。様々な遺伝的要因によりバリアの低下や軽度な炎症が起こることでディスバイオーシスが誘導され、その結果リーキーガットが誘導され、炎症スパイラルが加速すると考えられる。しかしながら、実際にどのような腸内環境の変化を経て、このスパイラルが形成されていくのかについてはほとんど情報がない。そこで本研究では、リーキーガット症状を呈する遺伝子組み換えマウスを用いて、腸内細菌叢、腸内代謝物、免疫細胞の動態を経時的に観察する。本年度は本遺伝子組み換えマウスにタモキシフェンを投与して、リーキーガットが誘導されることを確認した。リーキーガットは炎症性腸疾患、自己免疫疾患、肝疾患など種々の疾患の疾患の原因となる。我々は、本マウスにリーキーガットを誘導することで顕著なディスバオーシスが誘導され、さらに多発性硬化症またはギランバレー症候群に類似した自己免疫疾患症状を示すことを見出した。並行してIBDを対象としてヒト検体の解析を進めているが、腸内環境の多相関解析の結果として、ディスバイオーシスに伴うムチン利用能の低下が短鎖脂肪酸の産生減少に繋がることを見出し、その病理的意義を検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画どおりリーキーガットマウスの表現型解析と腸内細菌解析を実施した。さらに臨床検体において、慢性炎症に伴う腸内環境の異常について相関解析を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
リーキーガットマウスに見られる自己免疫疾患様症状の病理学的解析を実施し、どのようなヒト疾患を反映しているのかを明らかにする。さらに炎症スパイラルに至る病態メカニズムの解析を実施する。IBD臨床検体についてムチン利用能低下の病理的意義を検証する。
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Causes of Carryover |
リーキガットモデルにおいて自己免疫様疾患が自然発症するという予想外の結果が得られたため今年度はその表現型解析を重点的に行った。そのため、当初予定されていたオミクス解析に必要な関連費用を次年度に使用することとした。
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