2017 Fiscal Year Research-status Report
Development and utilization of integrated paper devices for creating demand for wood to restore Japanese forestry
Project/Area Number |
17KT0069
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江前 敏晴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40203640)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 悠希 筑波大学, システム情報系, 助教 (10601883)
古賀 大尚 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30634539)
川原 圭博 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (80401248)
|
Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
Keywords | 音波 / 発電 / セルロースナノクリスタル / セルロースナノファイバ / 圧電性 / アクチュエータ / ヤング率 |
Outline of Annual Research Achievements |
音波振動発電は、エレクトレットを用いた静電誘導方式の原理で機械的に紙を振動させれば十分な起電力が得られるが、実際の音波ではこれまで微弱な発電しかできなかった。電極貼付紙をゴム膜で吊す機構に改造したところ、振動が大きくなり音波でLEDが点灯した。40Hz正弦音波加振時に電圧1.16 V、有効電力0.67 μWを得た。しかし、高周波数になるにしたがい起電力が低下することから紙面内の振動の状態を調べることにした。音波で振動する正方形の紙試料の中央部の過渡的な変位をレーザー変位計で測定した。高坪量、低ヤング率の紙は低周波数で振幅が大きくなり、周波数が高くなると振幅は小さくなることなどを実験データから明らかにした。さらに、音波振動中の紙試料の3×3の計9点で過渡的変位を同時測定する装置を独自に組み上げ測定した。周波数の増加に従い、9点同位相の振動から位相が面内でずれて現れるものなどが、加振周波数、坪量、ヤング率の特性に応じて現れることを著者は見出した。 また新たにセルロース系材料を用いた新たな発電システムとして、結晶性物質が示す圧電性の利用の検討を始めた。省電力の微小なエレクトロニクスを駆動するシステムの開発を目指すものである。セルロースナノクリスタル(CNC、棒状のナノ微結晶)は1つ1つのナノ微粒子は圧電性を示すことが知られているが、変位の向きを揃えるためにCNC配向フィルムを調製した。エレクトロスピニング技術によって配向シートを作製しX線回折により配向フィルムであることが証明された。セルロースナノファイバとの組成を変えたブレンドフィルムは、走査型プローブ顕微鏡下で電場の変化により厚さ方向に伸縮する変位を測定できた。さらに圧縮試験機で圧力を加えることによって発生する電圧を測定し、圧電素子及びアクチュエータの両方で活用できることことを示し、それらの現象を相互に関係づけた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音波振動発電では、ゴム膜で紙を支えるというアイデアで紙全体を振動させることで発電が可能になったことにより進展があった。また低周波数では倍音、三倍音が入り込むことで紙面内で位相がずれたので振動が生じ、それが起電力を低下させることが推測された。今後は電極の工夫により位相が反転している場合にも起電力を大きくできるような方法を検討中であるが、紙の動きを多点測定によりモニターしながらこの問題を解決する方法を試行できることがわかり、見通しが立った。 発電機の起電力を向上させる手段として、両電極間に高誘電率層を形成させる方法が考えられた。高誘電体層と高導電体層を交互に設けるパターニングを検討するために、層状にインクジェット印刷を行う技術を検討した。CNCsの分散液を5、10、15層となるように重ね打ちしたところ、厚さの均一性を示す光の屈折現象が見られ、その色が一様であったことから光の波長レベルでは欠陥がなく均一な層を形成できたことが伺えた。 圧電性の測定に関しては、大学の設備としてプローブ顕微鏡に取り付ける圧電性測定ユニットを利用できることが分かったため、特別に電圧を印加する装置を用意しなくても測定できることがわかり、これからの進展が期待できる足掛かりが得られた。 以上のような個々の技術の達成により、今後統合的なデバイスを作製するための要素技術が出来上がりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
音波振動発電機に関しては、低周波数の音で大きな振幅を以って振動する場合の面内での位相のずれが発電効率を下げていることから、電極を9分割して紙面内で位相のずれがあってもその点での最大の電圧が個別に得られる工夫を検討している。振動の位相のずれは電圧の位相のずれと一致するため9分割の電極で発生する電圧の位相は異なる。しかし整流を行えば、位相のずれによってエネルギーが打ち消される現象はかなり軽減されるはずである。この技術によってどの程度発電効率が上がるのかを検討する。 統合的なデバイスとして、電源や素子を1枚の紙製ポスターに組み込み、何らかのコンセプトを持った第一段階の試作品を作製する。その1つとして視覚障がい者用の駅などに展示するナビゲーションポスターを作製する。発電機は紙全体の音波による振動を利用するのが最終目標であるが、とりあえず電池を貼り付けて電源を供給する。指で触ることによる接触センサーを使って、あらかじめメモリに記録された音声信号を再生し、進行方向に危険なものがないかどうか、また出口への経路を教えてくれるポスターを作製する。その他のトリガースイッチとして視覚障がい者が「話しかける」「接近する」なども検討する。再生された音声はポスターの紙自体を振動させて十分大きな音を出すように特定箇所を印刷方式により加工する技術も併せて開発する。
|
Causes of Carryover |
音波振動発電中の紙の変位を2次元で撮影する装置の購入を予定していたが、精度の高い製品は予算を超えてしまうことがわかり、9個のレーザー変位センサーを利用する独自のシステムを組み上げたため支出が大幅に小さくなったことによる。 次年度以降、標準型シートマシンを購入し次年度使用額を使い切る予定である。
|
Research Products
(18 results)