2017 Fiscal Year Research-status Report
テルペン環化酵素の遷移状態制御機構の解明とその機能改変
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17KT0095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
淡川 孝義 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (80609834)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | テルペン環化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
テルペン化合物は多くの医薬品資源を含む。その構造は主にC-Hからなるため、有機合成での調製は通常困難である。生合成酵素を用いて、有用テルペノイド骨格を合成するためには、その鍵反応であるテルペン環化反応への理解が必要不可欠である。一方、テルペン環化反応中の遷移状態のカチオン中間体の解析は困難であり、これまでその反応制御は困難であった。本研究では、糸状菌含テルペン化合物であるアスコクロリンを取り上げ、その環化酵素を既知のホモログ酵素と比較し、その活性アミノ酸に変異を加えることで、その反応制御を行うことを計画した。アスコクロリン環化酵素はエポキシドの末端に存在するエポキシドをプロトン化し、生じたカチオンが次々にアルケンのπ電子から攻撃を受ける反応を触媒することによって、テルペン環化を触媒する。アスコクロリン生産菌より、その環化酵素AscFをゲノムマイニングの手法によってクローニングし、その前駆体供給酵素と共に糸状菌Aspergillus oryzaeにて発現することで、そのテルペン部の環化した中間体を取得することに成功した。次にその酵素を精製し、化学合成によって調製したエポキシ中間体と共にインキュベートすることで、その反応をin vitro再構成することに成功した。ゲノムデータベースよりピックアップしたAscFのホモログをエポキシ中間体基質とともに反応したところ、Aspergillus fumigatus由来のホモログであるPyr4がAscFとは異なる生成物を与えることを確認した。現在、AscFのアミノ酸配列をPyr4型に変異し、その遷移状態を野生型とは異なる様式で制御することで、非天然型反応を触媒する酵素の構築を目指して、研究を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テルペン環化反応をAspergillus oryzaeの異種発現系で再現し、今後様々なテルペン環化反応を試験する基盤を構築した。これは、今後 I型テルペン環化酵素など多様な糸状菌環化酵素に応用可能である。また、そのin vitro反応を再構成することに成功し、変異体を簡便に試験する系は整いつつある。今後、遷移状態の制御を目指して、類似の基質を受け入れるものの、異なる反応を触媒する酵素との比較がその活性アミノ酸を見出すために重要になってくると思われる。実際に10数個のAscF変異体を構築しているが、未だに環化反応が変化した変異型酵素の取得には至っていない。遷移状態の制御のためには酵素の結晶構造解析が必要となるが、今だにタンパク質結晶の取得まで至っておらず、これらの結果より、予定よりやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
異なるタンパク質との融合タンパク質のコンストラクトを作り、それをもとに結晶化を行う、基質との共結晶の条件で結晶化を行う、など工夫をする。結晶化に至らずとも、変異型酵素の構築に至るように、さらに多様なホモログ酵素との配列比較、系統樹解析を行い、変異酵素を構築し、非天然型反応を検出できるか試験する。酵素のホモロジーモデリングと反応中間体のドッキングシミュレーションによって見出した活性部位のアミノ酸に変異を加えて反応することで、非天然型反応の触媒が検出できるか試験する。必要であれば、糸状菌in vivo発現系を用いて変異酵素を発現することで、微量な非天然型生成物も見落とすことのないように工夫する。また、ゲノムデータベースより、新規なテルペン環化酵素を見出し、糸状菌発現系にて発現することで、これまで検出されていないテルペン環化反応を見出し、その解析により新規な遷移状態制御の反応経路を見出す。
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