2018 Fiscal Year Research-status Report
テルペン環化酵素の遷移状態制御機構の解明とその機能改変
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17KT0095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
淡川 孝義 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (80609834)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 遷移状態 / テルペン / 二次代謝 / ゲノムマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
テルペン化合物は多くの医薬品資源を含む。その構造は主にC-Hからなるため、有機合成での調製は通常困難である。生合成酵素を用いて、有用テルペノイド骨格を合成するためには、その鍵反応であるテルペン環化反応への理解が必要不可欠である。一方、テルペン環化反応中の遷移状態のカチオン中間体の解析は困難であり、これまでその反応制御は困難であった。本研究では、新たなテルペン環化酵素の発掘を目指して、ゲノムマイニングによりPenicilliumに広く保存されるテルペン環化酵素PcCSを見出し、それをAspergillus oryzaeにて異種発現することで、その生成物を取得した。生成物の平面構造を各種NMRで決定し、絶対立体配置を結晶スポンジ法にて決定した。その結果、11-5員環カチオン、9-5-5員環カチオン遷移状態を経て6-5-5-5員環型の生成物を与える新規酵素であると判明した(Mitsuhashi et al. Org. Lett. 20, 5606-5609 (2018))。また、多様な生理活性を持ち、医薬品シードとして有望な糸状菌由来メロテルペノイドascofuranone、ascochlorinの環化酵素の解析を行い、6-endo-tet環化反応を触媒するAscF、5-endo-tet環化反応を触媒し、tetrahydrofuran構造を形成するAscIを見出した(Araki, Y. & Awakawa, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2019, in press, Quan, Z. & Awakawa, T. Org. Lett., 2019, 21, 2330-2334.)。また、AscF基質を他の環化酵素Pyr4に作用させ、異なる環化パターンの生成物を与えることを明らかにした。これら酵素の基質特異性、反応性には興味が保たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テルペン環化制御機構の解明とその利用のためには新規触媒の発掘とその反応への理解が重要となる。微生物ゲノムには多数のテルペン環化酵素が存在し、これらは宝の山といえる。本年は、微生物由来テルペン環化触媒の発掘を行い、C25のセスタテルペン環化酵素であるPcCS、メロテルペノイド環化酵素AscI, AscFの反応解析を行った。その結果、PcCSの6-5-5-5員環型生成反応、AscFの6-endo-tet環化反応、AcsIの5-endo-tet環化反応を明らかにした。9-5-5員環カチオンから異なる環化反応を触媒する酵素がEvVS, PaPSと二種知られており、PcCSは異なる遷移状態制御機構が存在すると考えられ、興味がもたれる。AscIはこれまでの環化酵素とは相同性をもたない新規な環化酵素であり、その構造機能相関によってテルペン環化制御への新規な知見が得られる。AscF、Pyr4は同一の基質から異なる環化パターンを触媒する酵素であることを明らかにし、メロテルペン環化反応における新規な知見を取得し、物質生産への可能性を示した。遷移状態の理解と制御のために、様々なテルペン環化反応への理解と生体触媒の機能への理解を深めることは重要であり、本年は遷移状態制御に向けた土台を構築することができたたため、おおむね順調に進行したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
EvVS, PaPS, PcCSの配列比較、中間体構造のドッキングにより、それぞれどのアミノ酸によって反応制御されるか明らかにする。見出したアミノ酸に対して相互にアミノ酸変異を加え、それぞれの制御機構に対して知見を得る。変異酵素はAspergillus oryzaeにて異種発現を行い、新規な生成物が得られるか試験する。また、セスタテルペン環化酵素EvQSとドッキングシミュレーションの結果に従い、カチオンの安定化に関わると予想されるF92、Y192にそれぞれアミノ酸変異を加え、それら酵素の異種発現によって生成物を解析する。Ascochlorin生合成とピリピロペン環化酵素Pyr4をA. oryzaeにて共発現することで、人口生合成経路を構築し、新規物質生産系を構築する。テルペン環化酵素とその変異体、非天然型基質を用いることで、テルペン環化反応の制御と物質生産への応用を試み、新規物質生産系を構築する。
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