2009 Fiscal Year Annual Research Report
大型偏極ターゲットを用いたハドロンのクォーク・グルーオン構造の研究
Project/Area Number |
18002006
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岩田 高広 Yamagata University, 理学部, 教授 (70211761)
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Keywords | 核子 / スピン / 偏極標的 / QCD |
Research Abstract |
原子核は核子から成り立っている。核子は、内部自由度として「スピン」を持つが、核子スピンの起源がはっきりしていない。核子は、「クォーク」が結びついた複合粒子であり、このクォークもスピンを持つ。従来、核子スピンの起源は、クォークのスピンと考えられてきた。ところが、クォークスピンの寄与が小さいことが明らかになっている。QCDによると、クォーク間の力を媒介するゲージ粒子「グルーオン」が存在する。グルーオンもスピンを持ち、核子スピンに貢献できる。本研究では、核子スピンに対するグルーオンスピンの役割を調べるため、CERNのCOMPASS共同研究において、偏極深部非弾性散乱実験を行い、核子スピン構造の詳細を明らかにする。 2009年度は、2002年から2008年までの間に蓄積されたデータの解析、および将来計画のためのテスト実験を行った。データの解析では、グルーオンスピン偏極、横スピン効果、ファイ中間子生成の非対称度などのデータを中心に作業を進めた。特に、グルーオンスピン偏極の解析は、オープンチャームとhigh-Ptハドロンの2つのチャンネルにおいて、これまでの精度を向上させる結果が得られた。結論として、グルーオンスピン寄与は当初予測された大きさには、ほど遠いほど小さいが、クォークスピン寄与に対して無視できるほど小さいわけではなさそうである。また、横スピン効果では、陽子標的に対すてHERMESグループが発見した0では無いSivers非対称度を我々のCOMPASS実験では確認することができなかった。また、ファイ生成の非対称度では、これまでで最高精度のデータが得られたが、今後はその結果から核子内のストレンジクォーク成分の推定を行う。
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