2006 Fiscal Year Annual Research Report
メタボローム解析のための計測技術開発とそれを用いた代謝経路推定
Project/Area Number |
18016028
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
冨田 勝 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60227626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 孝明 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (80026559)
曽我 朋義 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60338217)
金井 昭夫 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60260329)
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Keywords | メタボローム / キャピラリー電気泳動-質量分析計 / E-Cell / 赤血球 / 解糖系 / 大腸菌 / エネルギー代謝 / 頑強性 |
Research Abstract |
慶大医学部と細胞内で起こる酵素反応を構築した大規模代謝シミュレーター(E-CELLヒト赤血球)を開発した。予想結果をキャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)メタボローム測定による代謝物濃度の実測値を比較したところ、挙動が一致しなかった。諭文検索により、赤血球膜上のBand3タンパク質に解糖系の3つの酵素が結合する反応を見つけE-CELLヒト赤血球に付加したところ、メタボロームの実測値と結果が良く一致した。このシミュレーターにより、赤血球が低酸素を感知するとヘモグロビンが酸素を放出し構造を変えて赤血球膜に存在するBand3タンパク質に結合することによって解糖系を活性化すること、またATPと、酸素を組織に放出するために必要な2,3-bisphosphoglycerateを同時に増加させることを見出した(Kinoshita, A., et al., J. Bio1. Chem.電子版2007)。 また、研究代表者らが所属する先端生命研がこれまでに作成した4288個ある大腸菌の遺伝子一つを欠失させた変異体の中からエネルギー代謝にかかわる遺伝子を欠失した株を選出し培養した。また、野生株については、様々な条件で生育させた。これらの大腸菌の数千種類の細胞内分子(代謝物、タンパク質、RNA)を、最先端の測定技術を駆使してを網羅的に計測した。エネルギー代謝の各ステップにおける代謝流束をコンピュータで計算した結果、エネルギー代謝のような重要な遺伝子が欠失していても、細胞内の各種の物質量に変化がほとんどないこと、生育条件が変化した場合は、RNAやタンパク質の母は変化したが代謝物の量は変わらないことを見出した。この実験により、「大腸菌は、状況に応じて様々な手段で代謝を安定に保っている」ことを定量的に実証することに成功した(Ishii, N., et al., Science電子版2007)。
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