2008 Fiscal Year Annual Research Report
メタボローム解析のための計測技術開発とそれを用いた代謝経路推定
Project/Area Number |
18016028
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
冨田 勝 Keio University, 環境情報学部, 教授 (60227626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 孝明 慶應義塾大学, 大学院政策・メディア研究科, 教授 (80026559)
曽我 朋義 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60338217)
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Keywords | メタボローム解析 / バイオインフォマティクス / ケモインフォマティクス / MassBank / pH制御合成法 / プロテオーム解析 / emPAI法 / 代謝流束解析 |
Research Abstract |
生体内に含まれる代謝物質の包括的な理解を追究するメタボロミクスにおいては、他のオミクス研究と同様に綱羅的解析に関する基盤技術の開発が必須であると同時に、代謝反応ネットワークの解明が重要である。従って本研究課題の目的は、メタボローム解析による代謝物質の一斉測定技術の開発・改良および代謝ネットワークの構築の二点である。これまで、未知物質の同定や新規代謝経路の推定に必要な測定技術の開発と、バイオインフォマティクスとケモインフォマティクスを融合した新しい物質同定法の開発を行ってきた。また、トランスクリプトームやプロテオーム解析技術をも統合しメタポローム解析技術と複合的に活用することで、環境や遺伝的要因による細胞代謝の変動を調べ、微生物や動植物細胞におけるより完全な代謝ネットワークの構築を目指してきた。本年度は特に、未知物質同定手法の開発に関して同定精度を向上させる目的で、700種に上る基礎代謝物質のMS/MSスペクトルデータを取得しデータベース化(MassBank)し、新たに開発した「pH制御合成法」による標準物質の効率的な有機合成を可能にした。また、測定データから高精度なアラインメントおよびマススペクトルの自動解析を行うアノテーションソフトの精度を飛躍的に向上させ、同位体化合物を用いた代謝流束推定法を確立した。さらにプロテオームデータから数千種のタンパク質の絶対量を推定する「emPAI法」の開発により、未知代謝経路の探索に向けた基盤技術を整備した。これらの解析技術を組み合わせ、栄養欠乏下におけるがん細胞の代謝変化を調べたところ、がん細胞がこれまで嫌気性微生物や一部の寄生虫においてしか確認されていなかった「フマル酸呼吸」によってATP生成を行っている可能性が強く示唆され、我々が開発してきたメタボローム解析技術が新規代謝経路の推定に応用可能であることを実証した。
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Research Products
(12 results)