Research Abstract |
まず,味覚センサ受容膜の開発に関しては,脂質高分子膜表面上にフェノール化合物による修飾を行うことで,甘味物質であるショ糖,果糖,ブドウ糖等に対して高い電位応答を示すセンサ開発を目的とした研究を行った.高感度化を測るために,膜表面修飾物質の特性について各種の測定を行い,非荷電物質である甘味物質の電位計測を可能とする結果が得られた. 匂いのセンシングに関して,有機系,無機系材料などを主にした機能性薄膜を作成し,その匂いグループ毎に対する膜応答特性を調査した結果,自己組織化膜(SAM: self-assembled monolayer)の検知特性を明らかにした.SAMを利用した検知膜は,分子構造や分子量の違いによって匂いグループ毎に基本検知特性が異なり,選択的な検知の可能性が高いことが分かった.さらに,より高い選択性を得るため液相を利用した分別手法が良好であることが示された. また,匂いをセンシングするデバイスとなる人工嗅上皮チップ作製のために分子認識型匂いセンサ表面に関する基礎研究,ならびに簡易型マルチチャネルセンサの作製を行った.その結果,官能基および分子サイズを認識する単分子膜表面,加えて多チャネル化を容易に実現できる電気化学センサの基本的なデザインについて,匂いセンサデバイスが製作可能となる結果を得た.味覚センサチップの開発に関して,新たに8ビットSAR型アナログデジタル変換回路(ADC)を設計し,シミュレーションによりその動作を確認した.このADCと前年度試作した要素回路であるフロントエンドアンプとフィルタ回路を組み合わせ一つの集積回路とし,これらの結果をもとに0.35μm CMOSプロセスによりLSIを試作した. また,三層スパッタリング装置を用いて,Ti・Agのスパッタリングをプラスチック基板上に行い,ディスポーサブル味覚センサチップを実現した.
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