Research Abstract |
材線虫病抵抗性クロマツの2家系の苗木に,マツノザイセンチュウ(以後ザイセンと略)2アイソレイト,ニセマツノザイセンチュウ(以後ニセマツと略)3アイソレイトおよびそれらの雑種由来の8個体群を5,000頭ずつ接種した。その結果,雑種線虫の病原性は核ゲノムに依存して異なり,核外遺伝子は病原性に関係しなかった。すなわち,病原性に関わる遺伝子は核ゲノムにあることが示された。ザイセンのアイソレイトT4,ニセマツのアイソレイトTCSOOまたはT4♀×TCSOO♂雑種由来の個体群から3,0OO頭,休眠覚醒させたマツノマダラカミキリ幼虫および青変菌Ophiostoma minusをアカマツ小丸太に接種した。脱出してきたカミキリ成虫の平均保持線虫数(±SE)はT4が990±486a,TCSOOが390±35b,雑種由来の個体群が1126±480aであり,雑種由来線虫は高い乗り移り能力を持つ親アイソレイトに匹敵する能力を示した。雑種形成に及ぼす温度の影響を明らかにするため,ザイセン3アイソレイトとニセマツ2アイソレイトを用いて正逆交雑を16,20,25℃で行った。交雑は同種の雌雄と同じように起こり,温度の影響はなかったが,個体群形成に要する時間は低温ほど長くなり,16と25℃では交雑個体群は同種個体群より有意に長かった。このことから雑種由来個体群の初期の適応度は,親個体群に比べて低いと考えられた。2組の雑種由来の個体群とその親アイソレイトを25℃で長く飼育した。それらを用いて内的自然増加率を16,20,25QCで測定した。その結果,25℃では増加率に有意な差はなかったが,16と20℃では雑種由来個体群の増加率が親アイソレイトより有意に低い場合があった。これらの結果から,形成された雑種由来個体群は選択によって排除されにくいことを示された。
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