Research Abstract |
p63のプロモーターの組織特異的活性を検討したところ,軟骨においては転写活性化ドメインを持つアイソフォームの発現を制御する上流側のプロモーターが選択的に活性化されていることが明らかになった。このプロモーターの活性化因子としてNotch,T-boxfamily,NF-YAなどの転写因子群が同定された。軟骨の後期分化マーカーであるX型コラーゲン,p57に対して,また関節形成マーカーであるGDF5,WNT9Aについてp63の結合シスエレメントの存在を同定し,p63が軟骨分化の幅広いステップに広く作用する基本転写因子であることを示した。p63のリン酸化による制御の検討のためセリン,スレオニン変異体を作成し検討したところ転写活性化ドメイン内の複数のセリン,スレオニン残基の変異によりPTHrP-Gs-PKAシグナル,及びTAK1-MKK3/6-p38MAPKシグナルによる軟骨マーカープロモーターの転写活性化が阻害され,p63の軟骨分化制御メカニズムにリン酸化が深く関与していることが示唆された。p63の転写共役因子のうちとくにGATA5とC/EBPβの発現局在がp63と一致すること,またp63とGATA5及びSOX9が蛋白レベルでコンプレックスを形成することが明らかとなった。p63ノックアウトマウスのlimb Budを高密度培養し軟骨分化能を比較するとノックアウトマウス由来の細胞では野生型由来の細胞と比較し増殖は正常に起こるもののアルシアンブルー陽性の軟骨塊を全く形成せず,p63ノックアウトマウスにおける四肢の形成異常の成因として軟骨分化障害が大きな役割を果たすことが明らかになった。 p63のヘテロノックアウトマウスを用いた解析ではエンブリオ,変形性膝関節症モデルとも,野生型と比べ大きな差は見られなかった。そこでファミリー分子であるp53,p73について検討したところ,とくにp73βに強い軟骨分化能があり,p63の機能を代償していると考えられた。p63ファミリーの機能の詳細な評価のためp63の各アイソフォームのトランスジェニックマウスを作出した。
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