2008 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯林の栄養塩利用および炭素固定能の評価と保全
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18255011
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石田 厚 Forestry and Forest Products Research Institute, 植物生態研究領域, 室長 (60343787)
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Keywords | 乾季落葉樹 / 乾季常緑樹 / 熱帯季節林 / 強光阻害 / キャビテーション / 水利用 / 光合成 / 土壌栄養塩 |
Research Abstract |
タイでは11月から3月にかけて明瞭な乾季がある。乾季に落葉する落葉樹林は、その葉を落として乾燥をしのいでいると考えられる。乾季には気孔が開けないために、光合成速度が低下する。葉が吸収した光エネルギーのうち、光合成で使われなかった過度の光エネルギーは、活性酸素を生み出し、葉に光阻害を起こさせる可能性がある。そこで雨季から乾季に向かって、どのように葉のガス交換能が季節的に変化するか、またガス交換機能が低下する乾季にどのように水分利用特性や光阻害耐性機能が変わるかを、常緑樹と乾季落葉樹の間で比較した。その結果、常緑樹の葉では、乾季に過度の光エネルギーが増加するにつれて、葉内のキサントフィルサイクル色素の増加が見られ、また過度のエネルギーを熱として放散させる能力も増加していた。一方、落葉樹の葉では、乾季に過度の光エネルギーが増加するにつれて、光呼吸を高めることによって過度のエネルギーを消費していた。葉内細胞で二酸化炭素を最初に取り込む酵素であるルビスコは、温度や二酸化炭素/酸素濃度比によって、同じ酵素が酸素と二酸化炭素の固定速度を決めていることが知られている。従って乾季後半には葉を枯らしてしまう落葉樹では、多くのコストをかけずに乾季前半のみ光阻害をしのいでいた。逆に葉寿命の長い常緑樹の葉は、キサントフィルサイクル色素を作ることによって、よりコストをかけてより安全なメカニズムで光阻害を回避していた。これらの結果から、乾季に光阻害を防ぐ生理的なメカニズムは、葉のフエノロジーの違いに依存して異なっていることがわかった。また落葉樹でも常緑樹でも、乾季に木部道管の水切れ(木部キャビテーション)は見られなかったことから、キャビテーションは落葉とは関連していなかった。しかし森林への火入れ実験の結果、木部キャビテーションによって樹木や枝の枯死を引き起こすことが明らかになった。
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Research Products
(10 results)