2006 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムインプリンティングが関与する脳神経系発達の制御機構
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18300122
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉川 和明 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (30094452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 伊三男 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (70362621)
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Keywords | Necdin / ゲノムインプリンティング / 脳由来神経栄養因子 / 大脳基底核原基 / 介在ニューロン / 小脳顆粒神経細胞 / Cdc2 / アポトーシス |
Research Abstract |
今年度は、ゲノムインプリンティングによって発現が制御されているNecdinの中枢ニューロン分化における役割を父性necdin遺伝子変異(Ndn^<+m/-p>)マウスを用いて検討し、以下の結果を得た。 1.大脳基底核原基(GE)由来ニューロン分化に及ぼすNecdinの影響。マウス胎児のGE細胞を脳由来神経栄養因子(BDNF)存在下で培養したところ、GABA作動性介在ニューロンの一種であるcalretininニューロンの分化が促進された。このcalretininニューロンの分化促進はTrkBの下流シグナル伝達系、とくにMAPK系を介して起こることが分かった。この系におけるNecdinの影響を調べるため、Ndn^<+m/-p>マウス由来のGE細胞をBDNF存在下で培養したところ、野生型に比べてcalretinin陽性細胞数が有意に減少していた。Necdinは、BDNF受容体であるTrkBの自己リン酸化型を認識して結合した。したがって、内在性NecdinはBDNF-TrkB-MAPK系を増強してGEにおけるcalretininニューロンの分化を促進することが示唆される。 2.小脳顆粒神経細胞(CGN)の生存に及ぼすNecdinの影響。Ndn^<+m/-p>CGNを低K^+濃度で培養すると、野生型と比較して細胞死(アポトーシス)が増強され、細胞内Cdc2 mRNAとCdc2蛋白質の発現量も有意に増加した。Ndn^<+m/-p>CGNではCdc2キナーゼ活性が増加しており、Cdc2阻害剤roscovitineで処理によってアポトーシスの増強が阻止された。さらに、Ndn^<+m/-p>マウスの小脳を免疫組織化学により解析したところ、分化したCGNが集積している内顆粒層においてCdc2陽性細胞およびアポトーシス細胞が増加していた。したがって、内在性NecdinはCdc2遺伝子の発現を抑制してニューロン死を阻止することにより、CGNの生存維持に関与しているものと推定される。
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