2006 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物の熱電物性における酸素イオン副格子の構造とダイナミクス
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18360318
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大瀧 倫卓 九州大学, 総合理工学研究院, 助教授 (50223847)
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Keywords | 熱電変換 / 酸化物熱電材料 / 酸素欠損 / 格子熱伝導率 / 秩序-無秩序構造相転移 / フォノン散乱 / ペロブスカイト / ブラウンミラライト |
Research Abstract |
SrCoO_3系ペロブスカイト型酸化物について、酸素イオン副格子の構造と熱物性の関係を詳細に検討した結果、酸素イオン副格子の秩序-無秩序構造相転移に伴って熱拡散率が完全に可逆的に増減をすることを明らかにした。また、従来の相図には記載されていない高温域での秩序相の再出現を見出した。 SrCo_<1-x>Fe_xO_<3-δ>系ペロブスカイト型酸化物の室温での構造は、Fe置換量xの増加に伴ってブラウンミラライト型(BM)からペロブスカイト型(P)に転移することが知られ、x=0.3では室温でPとBMの混相となっている。空気中で種々のクエンチ温度T_qから液体窒素中に急冷した試料の熱拡散率αを室温で測定したところ、室温でのαはT_q=600℃から減少し始め、T_q=800℃以上では反転して急激に増大した。α測定後のクエンチ試料を毎回空気中に1200℃で5h保持後徐冷した試料のαは、T_qによらず完全に一定の値に回復した。従って、クエンチ試料のαのT_q依存性は気相酸素との平衡に関して完全に可逆的であるといえる。クエンチ試料の酸素量はT_qに対して約3.0から約2.5まで直線的に減少し、αのT_q依存性を説明しない。クエンチ試料のXRDより、T_q=500〜600℃ではほぼP単相だが、T_q=700℃以上で低温秩序相であるBM相が再び出現し、T_q=1200℃ではほぼBM単相となった。高温でのBM相の再出現は既報の相図には記載されておらず、新規な知見である。さらにこれらの相の量的関係に着目すると、T_q=800℃以上でのαの急激な増大は秩序相であるBM相への転移によるものだと考えられる。一方、T_q=600℃から800℃にかけてαが一旦減少するのは、P相中にBM相の微小なドメインが生成し始めるためであると示唆された。
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