2008 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物の熱電物性における酸素イオン副格子の構造とダイナミクス
Project/Area Number |
18360318
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大瀧 倫卓 Kyushu University, 総合理工学研究院, 准教授 (50223847)
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Keywords | 熱電変換 / 酸化物熱電材料 / 酸素欠損 / 格子熱伝導率 / 酸化亜鉛 / フォノン散乱 / 音速 / 共ドープ |
Research Abstract |
1.SrCoO_3系ペロブスカイト型酸化物について、試料を所定の温度T_qからクエンチし、凍結された結晶構造と熱物性の関係を詳細に検討した結果、熱拡散率αならびに熱伝導率κの可逆的な増減は、従来予想していたような酸素イオン副格子の無秩序化に伴うフォノン散乱の増強ではなく、音速の著しい低下、すなわち格子振動のソフト化に起因する可能性を見出した。酸素イオン副格子の構造相転移に伴って、金属-酸素結合の再配列や結合角のばらつきが生じ、結晶格子の非調和性が増大した結果、フォノンの群速度が低下している可能性がある。格子振動を定量的に評価するためにラマンスペクトルを測定したが、信号強度が小さく、十分な情報は得られなかった。 2.ZnOにAlとGaを共ドープしたZn_<1-x-y>Al_xGa_yOのXRDパターンには、A1ドープZnOに通常含まれるZnAl_2O_4スピネル相のピークが見られず、Gaの共ドープによりZnOへのA1の固溶限界が増大している可能性が示唆された。事実、A1のみをドープしたZnOでは、A1量x=0.03以上で導電率は低下に転じるが、Ga量y=0.02ではx=0,04まで試料の導電率は増大した。一方、Gaを加えると、導電率と熱伝導率が共に減少し、Ga量y=0.04以上では、焼結密度が急激に低下した。XRDパターンには、Ga量の増加に伴い、Gaを含む第2相に帰属すると考えられる不純物ピークが観察された。Ga量y=0.02ではGa無添加に比べて熱伝導率は半分以下まで低下し、導電率も低下するものの、その低下率は熱伝導率よりも小さいため、フォノン熱伝導率が選択的に低減できたと考えられる。Zn_<0.96>Al_<0.02>Ga_<0.02>Oではゼーベック係数も大幅に増加したために、1000℃でZT=0.65というn型バルク酸化物熱電材料としての世界最高性能が得られた。
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