2009 Fiscal Year Annual Research Report
バニロイド受容体を介した痛覚過敏発現メカニズムの解明とインビトロ痛覚定量系の確立
Project/Area Number |
18380171
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
太田 利男 Tottori University, 農学部, 教授 (20176895)
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Keywords | カプサイシン / 細胞内Ca / パッチクランプ / メチルサリチル酸 / 鎮痛 / TRPV1 |
Research Abstract |
本研究の目的は、神経原性疹痛や炎症性疹痛で生じる痛覚過敏の発現機構を明らかにするため、近年痛覚受容体分子としてその重要性が示唆されているバニロイド(TRPV1)受容体に着目し、その機能調節メカニズムを明らかにすることである。本年度はTRPV1チャネルを介した新規鎮痛物質を検索するため、GFP融合ヒトTRPV1を発現させたHEK293細胞(TRPV1-HEK細胞)に対するメチルサリチル酸(MS)の作用を調べた。MSはTRPV1-HEK細胞において、細胞内Ca濃度([Ca^2+]_i)を濃度依存性に増加させた。MSによる[Ca^2+]_i増加反応は細胞外Ca除去により消失し、TRPV1拮抗薬により抑制された。MSの持続適用では[Ca^2+]_iはピークに達した後、素早く脱感作した。MSによる脱感作はカプサイシン、酸、熱による[Ca^2+]_i増加反応を可逆的に減弱させた。内因性TRPV1アゴニストによる[Ca2+]i増加反応もMSによる脱感作により消失した。TRPV1-HEK細胞において、MSはカプサイシンと類似の外向き整流性電流を引き起こし、MSによる脱感作発生時ではカプサイシンによる電流反応は有意に減弱した。MSはカプサイシンやアリシンに応答しない変異型TRPV1-HEK細胞においても[Ca^2+]_i増加反応を引き起こした。ラット背根神節細胞において、MSはカプサイシン感受性細胞において[Ca^<2+>]_i増加反応を引き起こた。ラット足蹠部へ適用したカプサイシンによる疼痛反応はMSの前処置により有意に減弱した。以上の成績から、MSはTRPV1アゴニストとして作用すること、またMSによる局所鎮痛作用にはTRPV1チャネルの脱感作が関与している明らかになり、MSがTRPV1を介した新規鎮痛薬として有用である可能性を示した。
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