2007 Fiscal Year Annual Research Report
末期がん患者の呼吸困難感発生の機序の解明と治療法の開発を目指した研究
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18390425
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西野 卓 Chiba University, 大学院・医学研究院, 教授 (80009703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯寄 奈保 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10400970)
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Keywords | 呼吸困難感 / 咳 / 迷走神経 / 呼吸負荷 / THAM / 呼吸ドライブ |
Research Abstract |
本年度は1)‘咳と呼吸困難感の関係に関する研究'および2)‘THAM(トロメタモール)が呼吸困難感緩和に及ぼす影響について'の二つの研究を施行した。1)の咳と呼吸困難感の関係については,41名の健康被験者に呼吸困難感と咳を同時に発生させ,咳が呼吸困難感に与える影響を詳細に検討した。呼吸困難感は息こらえによって発生させ,咳はクエン酸吸入によって発生させた。また,同時に自発的な咳(voluntarycoughing)と浅く早い呼吸(panting)が呼吸困難感に及ぼす影響についても検討した。これらの検討の結果,咳そのものは呼吸困難感を発生することにはならないが,呼吸困難感がすでに存在する場合にはその増悪因子になることが示唆された。また,咳が増悪因子となる理由については咳発生時の呼吸パターン変化特に一回換気量の低下に伴う肺伸展受容器活動の低下,肺イリタント受容器活動の刺激元進など迷走神経求心路が深く関係することが示唆された。これらの情報は,病変が呼吸器におよび咳と呼吸困難感を併発しているがん患者の治療法を考慮する場合に極めて重要な意義を持つ。2)のTHAMに関する研究では,成人健常人14名を対象とし,呼吸性アシドーシスと弾性抵抗負荷を加えることで呼吸困難感を発生させた。THAM投与は呼吸性アシドーシスを改善し,呼吸数の低下および分時換気量の低下をもたらした。さらに呼吸ドライブの指標となる一回換気量/吸気時間比の低下を認めた。同時にTHAM投与により呼吸困難感は大きく改善した。また,THAM投与による有害事象は発生しなかった。これらの研究結果はTHAMが呼吸困難感の治療に応用できることを示唆するものであり,その意義は極めて大きい。
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