2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18401031
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
禿 仁志 Tokai University, 文学部, 教授 (10186009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金原 保夫 東海大学, 文学部, 教授 (20161614)
冨原 俊一 東海大学, 文学部, 助教 (50297206)
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Keywords | ブルガリア / トラキア平野 / 前期青銅器時代 / 集落 / 環濠 / 発掘 / 考古学 / テル・デャドヴォ |
Research Abstract |
本研究課題を遂行するため、ブルガリア、上トラキア平野に所在する先史時代遺跡テル・デャドヴォの発掘調査を27艮間にわたって行った。調査は本遺跡の東側斜面部に幅1m、長さ27mのトレンチを設定し、地山と思われる地表下約3mの黄褐色無遺物層まで、7層にわたる堪積層を掘り下げた。その結果最下層から地山へ約120-140cm掘り込んだ、断面逆台形を呈する溝の一部を検出することができた。検出面での溝の幅は310cm、平坦な底面部の幅は160cmを測る。柵や土塁等の付属施設は検出されていない。その構築時期は溝内の土器より前期青銅器時代あるいはその直前の時期と推測される。 この溝が集落の裾部を一周する「環濠」となるかどうかは今回明らかにすることができなかったが、デャドヴォ前期青銅器時代集落の始まりの時期にすでに集落外繰を画する施設があった可能性を示すことができたのは重要な成果であった。従前の少数の調査成果からは、当該期の集蒋にこのような施設が居住地を取り囲んでいたことを明確に示す例はむしろ少数であり、その点でも今回の調査データは貴重であう。本遺啓に隣接するエゼロ遣跡では溝は検出されず、2重の石累が集落を囲んでいた。同時期、同地域に営まれた集落でもその形態・構造に違いがあることが推測される。 前期青銅器時代はトラキア人の起源ともからんで、特に民族移動の面から注目される時代である。今回検出された溝が環濠」として集落を取り囲む防偉施設として機能していたものなのか、あるいは聖所のような特別な地区を区画する施設として作られたものなのか、これらの施設をもたなかった集落との比較も含め、「民族移動」の内実と意義を探るためにも、今回検出された「溝」の本格的な性格究明が大きな研究課題として今後に残されている。
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Research Products
(4 results)