2009 Fiscal Year Annual Research Report
バクトリアのギリシア都市の美術・考古学調査-ウズベキスタン共和国カンピール・デパ
Project/Area Number |
18401032
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芳賀 満 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (40218384)
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Keywords | 東洋史 / 西洋古典 / 古代ギリシア / 古代ローマ / 古代オリエント / 中央ユーラシア / 地理情報工学(GIS) |
Research Abstract |
出土遺物の研究の為に、中央アジアのギリシア図像を総覧した結果、ディオニュソス等の特定の図像が多いこと、したがってギリシア図像はアジアに選択的に伝播していることが判明した。西側の伝播力の強さと同時に、東側の吸引力の存在とその強さを認めるべきであり、東の視点から見た吸引力をこれからのヘレニズム研究においては設定すべきで、従来の「ヘレニズム」の概念の変更が必要であることが判明した。 東側の最大の吸引力の磁場は仏教であり、「共通の言語体系」で「グローバル」なヘレニズム図像は、「個々の土地での文脈・物語」で「ローカル」な仏教の中へ取り込まれてゆく。その時系列的研究の結果、ヘレニズム図像は初期は未消化で無機的に仏像に併置されたが、次第に有機的に融合してゆくことが明らかになった。 従来、ローカルに取り込まれるグローバルであるヘレニズム図像の宗教的意味の変容の研究では、「西」と「俗」からの視点が欠如していた。出家者の観点、経典依拠の研究のみでは仏教は「東洋人」の「宗教」としか捉え得ず、「西」からや「文化」としての認識が必要である。これからは在家ギリシア人仏教徒の視点からの造形言語に依拠した研究が益々必要であることが判明した。 さらに従来の「シルクロード」の概念も変更が迫られる。従来は西と東にのみ視座があり、その間は単なる「ロード」であった。しかしユーラシア大陸は単なる東西間の通路でも中継地でもなく、そこもまたローカルな物語を持つ自己完結した世界であり、造形や思想を変容させ新たなものを創造する場なのである。かつて「シルクロード史観批判」では南部オアシス定住民と北部草原テュルク系遊牧民との間の南北関係が強調されたが、結局は、東西も南北も大事なのであり、従ってユーラシア大陸全体に文明の十字路あるいはインターネットがあると捉え、そこも新しい文化の創造地・発信地であることを再認識すべきである。
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Research Products
(4 results)