Research Abstract |
1 工学校小学校の史料収集:工部大学校は,最初期にはその予備教育機関として工学校小学校も設置された.この小学校は短命に終ったこともあって,ほとんど知られていない.その史料を,断片的なものながら,収集した. 2 工部大学校電信科卒業論文のトランススクリプト作成:学校教育の歴史を研究する場合,制度面の沿革を調べることはできても,実際にどのような教育が行なわれたかを知ることは困難である.工部大学校電信科(のち電気工学科)の場合,卒業論文(英文手書き)と実習報告書が保存されており,教育の実際を示す重要な基本史料である.19世紀の第3四半世紀における欧米の電気技術の発展と変貌は急速であって,その変化のさまは工部大学校電信科の卒業論文に反映している.欧米の電気技術の変貌,その日本への移入という観点からも,工部大学校電信科の卒業論文は史料として有用である.第1回生ら最初期の卒業生のうち,志田林三郎,中野初子,三宅順祐の卒業論文のトランススクリプトを作成した. 3 志田林三郎,藤岡市助,岩垂邦彦,三宅順祐の個別研究:上記の最初期の卒業生のうち,数名の個別事例について,史料収集と研究をおこなった.志田については彼の1881年のパリ第1回国際電気博覧会報告,岩垂については岩垂家・喜田村家文書,三宅順祐については白熱電球国産化を中心に研究した. 4 『藤岡市助関係史料』:特に,藤岡市助に関しては岩国市徴古館・学校教育資料館に『藤岡市助関係史料』があるので,同館と協力して同資料の一部のマイクロフィルム化を行った.同資料には,藤岡市助の学生時代の資料や,彼が教員となってからのノートなどがあるので,卒業論文とあわせて,工部大学校における研究と教育のようすをうかがうことができる.
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