2007 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズムの制度化と国家言説-ポスト冷戦からの歴史化
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18520179
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
越智 博美 Hitotsubashi University, 大学院・商学研究科, 教授 (90251727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 玲一 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 准教授 (70262920)
吉川 純子 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20251316)
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Keywords | モダニズム / 冷戦 / ジェンダー / ポストモダニズム / ナショナリズム / アイデンティティ / マスキュリニティ / 占領政策 |
Research Abstract |
本研究は、歴史的、文化的な構築物としてのモダニズムを、国家言説、冷戦の政治言説、ジェンダー・セクシュアリティ言説の相互干渉性の視点から再考し、それらの言説の関係性からモダニズムのキヤノン性の構築過程の再考を目指すものである。越智は予定通り8月にワシントンDCに滞在し、アメリカが輸出したモダニズム文学に関する資料を国立公文書館および議会図書館にて収集し、アメリカ文学を輸出する際の公式の政治言説の跡づけを試みた。その成果の一部はお茶の水女子大学COEの成果刊行シリーズに収録され、またGHQの図書館の系譜を論じた英語論文をCatherine Turner編纂の本に寄稿し、MLA(12月)で発表予定である。三浦は、19年度前半は、引き続きシカゴに滞在し、Nicholas Brown, Madhu Dubey, Walter Benn Michaels等と、モダニズム、ナショナリズム、アイデンティティの三者の関係について議論を重ねた。予定を若干変更してScott Fitzgerald研究を続け、その成果を日本フィッツジェラルド協会、日本アメリカ文学会東京支部会等で発表した。現代の視点から、アメリカのナショナル・アイデンティティの変容と資本主義との関係を再検討したこの試みは、現在論文執筆中。当初の予定であったHemingwayとFaulknerについては、日本英文学会全国大会(5月)で発表予定である。吉川は、冷戦期のマスキュリニティが再構築された過程を検証するために、第二次世界大戦後のEarnest Hemingwayの作家活動とマス・メディアの関係を調査した。性別役割分業に基づく核家族が冷戦下の国家安全保障の基盤として位置づけられ、男性には家族と国を守る男らしさが要求される一方で、大衆消費社会の中で従来の男性性が揺らいだ当時、Hemingwayは猛獣狩り、ゲーム・フィッシング、飲酒、闘牛見物など、「男らしく消費する男」という新たな男らしさのモデルとして提示されたという新しい視座を得た。 この成果をもとに、ネオ・リベラリズムと冷戦の関係をめぐる研究の準備として越智、三浦はCornel West, Democracy Mattersの翻訳を進めている。
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Research Products
(6 results)