2008 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ先住民文学・アジア系カナダ文学にみられる「グローカル」性の考察
Project/Area Number |
18520241
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 アヤ子 Meiji Gakuin University, 教養教育センター, 教授 (70139468)
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Keywords | グローカル性 / Tomson Highway / Dry Lips Oughta Move To Kapuskasing / カナダ先住民 / Hiromi Goto / カナダ文学 |
Research Abstract |
明治学院大学国際平和研究所主催シンポジウム「グローバル化と多民族共生」で、カナダ先住民作家Tomson Highwayの戯曲Dry Lips Oughta Move To Kapuskasingを取り上げて、「カナダ先住民文学にみる<グローカル性>」を発表した。1492年のコロンブス一行による北米大陸到来によって、「ドラスティックでトラウマティックなことが起こった」とハイウェイは批判する。カナダはアメリカ同様イギリスや他のヨーロッパの列強が先住民の土地を植民地として略奪して建国された。以来、新天地を求めてヨーロッパから離散したディアスポラたちが、先住民たちを迫害し、ホームランドにいながら彼らを居留地に囲い込み、ディアスポラ化した歴史がある。先住民は悪名高き「白人同化策」という名目のもとに、インディアン文化の絶滅を強いられ、子供たちはカトリック教会運営の寄宿学校に入れられてキリスト教主義による洗脳教育を強制された。 従来、先住民作家は、支配者・被支配者という二元的な構成で、悲劇的存在として先住民を描いてきた。しかしハイウェイは本作品で、インディアン神話・文化の象徴で、かつジェンダーを超越した存在のトリックスターを登場させて、父なる神を崇める一神教のキリスト教が作り上げた家父長制的世界に挑戦するとともに、グローバル化によって二十一世紀には消滅してしまう恐れがあるローカルなインディアン文化とインディアン語を復活させることによって、グローバルとローカルなものの共生を「グローカル」という形態で展開している。これは、民族そのものの存続をはかろうとする先住民作家の切ないほどの願いでもある。この発表は『PRIME』に掲載される。 本年6月の日本カナダ文学会年次研究大会では、インタビューを基に「Hiromi Gotoの作品にみるグローカル性」と題して発表し、『カナダ文学研究17号』に掲載される。 これら二つの学会発表は、「グローカル性」という新しい視野に立った新文学理論として注目されるだろう。
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Research Products
(5 results)