2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世における紛争と秩序形成に関する研究-山野紛争関係史料の収集と体系化-
Project/Area Number |
18520514
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
小林 一岳 Meisei University, 人文学部, 教授 (20298061)
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Keywords | 山野 / 紛争 / 秩序 |
Research Abstract |
平成20年度は、昨年度に引き続き南北朝期〜戦国期にかけての山野紛争関係史料の収集及びデータベース化と時代ごとの史料の分析・研究、フィールド・ワークを進めた。データベース化については、研究代表者・連携研究者・研究補助者で全国を地域ごとに分担して行った。戦国期の文書も含めて作業を進めているため、まだ完了していないが、平成21年度も作業を継続しつつまとめの検討をすすめたい。 分析・研究としては、室町〜中近世移行期の山野紛争を扱った。具体的には、前年度から引き続き、京都近郊の代表的山野紛争地域である山城国禅定寺とその周辺、及び醍醐寺領炭山地域をフィールドにして、地名・信仰・石造物・村の組織・山野の境界などについて調査・研究を行った。また、炭山を含む鎌倉後期の荘園絵図(富家殿山絵図)をもとにして、絵図に含まれる地名・寺社・山・境界標識等についてフィールド・ワークでの現地比定を行った。詳細な分析・研究については今後の課題であるが、曽束・禅定時・炭山・醍醐・伏見といった広域な地域が平安〜鎌倉期には摂関家領を中心にいわばゆるく一体化した地域として存在し、京都への資源の供給地となっていたものが、鎌倉後期からの山野紛争で地域内部に対立・抗争が生じ、その結果それぞれ個別の地域ごとのまとまりが強化されつつ、新しい秩序のもとでお互いが結びつき、新しい広域な地域社会が形成されていく、ダイナミックなメカニズムが明らかになりつつあるといえよう。今後はこの視角から、さらに研究を進めていくことを課題としたい。なお、研究成果として連携研究者の蔵持重裕を編者とする『中世の紛争と地域社会』(岩田書院)が刊行され、そこには研究代表者の小林一岳が、鎌倉期の禅定寺と曽束荘の山野紛争を復元した「山野紛争と14世紀地域社会」という研究成果論文が所収されている。それとともに連携研究者の酒井紀美・則竹雄一も同著に論文を執筆し、共同研究の成果が公表されている。
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Research Products
(1 results)