2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァロワ家ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンの金融と財政
Project/Area Number |
18520570
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
金尾 健美 Kawamura Gakuen Woman's University, 文学部, 教授 (20286173)
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Keywords | 西洋史 / 経済史 / 財政学 / 諸侯 / ブルゴーニュ |
Research Abstract |
第1の課題はブルゴーニュ地方の税収長期動向の継続調査であった。すでに調査を終了した他二管区(AutunoisとAuxois)と同様に、Dijon管区に関しても通常会計は1433年に底を打って、翌年から回復局面に入ることが指摘できる。消費課税と酒税の記録は1426年から1436年までの記録は現存する。34年と35年の税収が低調で、36年に回復したことは事実として指摘できるが、それ以降の記録が散逸したため、他の管区との比較が難しい。水・森林利用税gruerieは史料の保存状態が一定しないため、稿を改めて詳細にする。 4つめの管区となるChalon管区の調査はB3664(1432年)からB3676(1435年)まで足かけ3年分の調査しかできなかったので、次年度に継続する。 第2の課題はブルゴーニュ税収人ジャン・フレニョJehan Fraignotの訴訟(1432-33年)を詳細にすることであった。今年度はこの調査に重点を置いた。まず本訴訟の判決文原本は散逸し、筆写のみ現存することを確認した。そこで筆写の写真版作成、テキスト確定、校訂版作成を行った。次に訴訟の争点と双方の主張の論拠を推定し、さらに会計記録を精査して事実を確認した。検察は税収人フレニョが通貨変動を利用して累積負債額を不当に低く評価した点を背任と見做し、本来の負債額との差額を横領として弾劾した。これに対して、被告は故意ではなく、実際に流通していた通貨を基準に信用と負債を算定したことを説明し、検察の主張は現実的合理性を欠くと主張した。判決はほぼ検察の主張通りとなった。本訴訟に政治的不当性はないと判断される。詳細は大学紀要に発表した。
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