2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァロワ家ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンの財政と金融
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18520570
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
金尾 健美 Kawamura Gakuen Woman's University, 文学部, 教授 (20286173)
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Keywords | 西洋史 / 経済史 / 財政学 / 諸侯 / ブルゴーニュ |
Research Abstract |
本年度に実施した調査結果と、2006年(平成18年)度以来の調査結果を併せて分析した結果、1430年代のブルゴーニュ公領の税収動向に関して、以下の知見を得ることができた。 まずバイイ管区ごとの社会経済的性格であるが、6管区のうちシャティヨンとオーソワは城塞都市を中心とした比較的小型の管区。オータンは古くからの司教座都市、ディジョンは行政都市、シャロンは年市で知られた商業都市を中心とする管区であった。しかしシャロレは特記事項がない農村地帯であった。 各管区の税収関連の史料は大きく4種類に分類される。すなわち、地代を中心とした通常収入の記録、消費税と酒税の記録、水・森林資源利用税の記録、御用金と借入金の記録である。管区の規模はかなりの差があり、各種の税収合計額はディジョンが年平均8000リーヴルで最大、最小はシャティヨンで1000リーヴルであった。 ブルゴーニュ公の全支配領域では1426年にすべての財務担当者が累積残高を清算した。そこで翌1427年を基準年とし、各管区の同年の税収額を100とする指数値に換算して税収動向を比較検討した。その結果、各管区の時系列動向は、それぞれの性格差にも拘わらず、高い相関性が観察された。すなわち、1)1430年代に1427年のレベルを回復することはない。2)30年から31年にかけて税収は急落する。3)32年にやや持ち直すが、4)33年から再び下落を示し、34年ないし35年に底を打つ。5)36年には急速に回復するが、それでも指数90に達することはなく、以後27年レベルの7~8割程度で推移した。 次にこの時系列動向を決定づけた要因を分析した。当該時期の当該地方においては、穀物とブドウの生産と流通が税収動向に強く反映し、その生産は気候に大きく左右されたと理解される。気候の長期変動に関する先行研究によれば、1430年代はいわゆる「小氷河期」に相当し、寒冷であった。したがって農業生産は振るわず、税収額はそれに応じて低迷したことを実証することができた。
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Research Products
(1 results)