Research Abstract |
本研究の課題は,工業化の前提条件を準備した近世イギリスにおいて,都市成長のための基盤整備がハード・ソフトの両面でどのように進められたのかを,代表的な地方都市のひとつであるノリッヂを取り上げ,実証的に検討することである。研究初年度である平成18年度は,申請時の計画通り,主として史資料収集とデータベースの作成を中心に研究を進めた。史料の収集については,まず,都市の行財政に関連する基本的な史料である市長裁判所議事録と都市会計記録のうちすでにマイクロフィルム化されているもののコピーを,ノリッヂ都市史関係史料の多くが所蔵されているイギリスの地方文書館であるノフォク・レコード・オフィスから取り寄せ,マイクロフィルムの画像をコンピュータ上で閲覧できるように電子化した。また,8月から9月にかけては,ノフォク・レコード・オフィスを直接訪問し,マイクロフィルム化されていない史料の探索・収集を行った。その結果,都市会計記録,都市政府が受託者となって行われた慈善事業関連史料,都市住民間の債権債務関係に関連する史料を,デジタルカメラで撮影し収集整理することができた。データベースの作成については,まず,都市会計記録について,時系列,また項目ごとの収入・支出の変化をつかめるようなデータベースの作成を進めた。また,都市住民間の債権債務関係や慈善事業をその背後にあって支えている社会関係を推定するために,都市住民の個人情報のデータベース化を進めた。市民登録簿,都市政府役職就任者リスト,各種課税記録(炉税,窓税など)のデータの入力編集が,この作業の主な内容である。史資料の収集とデータベース化の作業はかなり進めることができたが,まだ完結してはおらず,申請時の計画通り,平成19年度もその作業を継続していく予定である。また,整理したデータの分析にもとりかかりたい。
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