Research Abstract |
本研究の課題は,工業化の前提条件を準備した近世イギリスにおいて,都市成長のための基盤整備がハード・ソフトの両面でどのように進められたのかを,代表的な地方都市のひとつであるノリッヂを取り上げ,実証的に検討することである。平成19年度は,申請時の計画通り,昨年度と同様に主として史資料収集とデータベースの作成を中心に研究を進めた。また,6月には,ノフォク・レコード・オフィスを直接訪問し,マイクロフィルム化されていない史料の探索・収集を行った。その結果,都市会計記録,都市政府が受託者となって行われた慈善事業関連史料,都市住民間の債権債務関係に関連する史料を,デジタルカメラで撮影し収集整理することができた。データベースの作成については,まず,都市会計記録について,時系列,また項目ごとの収入・支出の変化をつかめるようなデータベースの作成を進めた。また,都市住民間の債権債務関係や慈善事業をその背後にあって支えている社会関係を推定するために,都市住民の個人情報のデータベース化を進めた。市民登録簿,都市政府役職就任者リスト,各種課税記録(炉税,窓税など)のデータの入力編集が,この作業の主な内容である。そして,基盤整備を支え,その前提となる市民間(特に都市支配層)の社会関係について,これまで収集整理したデータベースをもとに検討し,その成果は論文「近世ノリッジの聖ジョージ・カンパニー」に盛り込むことができた なお,史資料の収集とデータベース化の作業はかなり進めることができたが,まだ作業が完了していない部分が残っており,平成20年度は,その作業を完了させ,整理したデータの分析に本格的に着手していきたい。
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