2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本の学力調査・個性調査と教育評価-履修主義と修得主義の相克-
Project/Area Number |
18530608
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山根 俊喜 Tottori University, 地域学部, 教授 (70240067)
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Keywords | 学力 / 個性 / 学力調査 / 個性調査 / 試験 / 考査 / 教育評価 / 測定運動 |
Research Abstract |
1905年頃〜1920年代半ばまでの学力調査・個性調査について、関係史資料を収集・整理し、その目的・機能等に関して分析・考察を行った。 個性調査は、当該期以前に存在した、行状・操行査定のための評価原簿(行状簿、操行査定簿など)が、この時期の個性尊重思想、実験教育学等の導入を媒介にして、教育を行うための前提的・基礎的資料を提供するものとして明治末に再編されたものであり、その後、その評定の主観性を、日本における測定運動に触発されてメンタル・テスト等を導入することによって払拭し、学級経営の基本資料とされることとなった。 学力調査は、第3次小学校令において進級・卒業認定が「考査」に依ることとなったため、学年と学力が一致せず、学力を表す徴表がなくなったこと、明治30年代後半以降、義務教育における学力の向上が政策的課題となったこと、などを背景に、直接には、明治38年に文部省が関東地方で行った学力調査を契機に明治末から大正期に全国各地で行われるようになった。全国レベルで行われたものはないが、府県レベル、郡レベル、あるいは学校レベルで実施されている。その目的(及び機能)は大別して、(1)学力向上のために教授の欠陥を明らかにしその改善を図る、(2)学校間・教師間・生徒間に学力をめぐる競争を組織することで学力向上をめざす、の二つである。(2)のを目的とする試験は明治27年の文部省訓令により禁止されていたが、実際には<比較試験>といった名称で行われている。これは学制期以来の<比較試験>の復活であった。(2)の目的は薪たなものであり、県、郡レベルで毎年定例の学力調査により、教科毎の教授上の問題点を明らかにするなどの動向も生成した。
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