2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18570011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舘野 正樹 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (00179730)
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Keywords | 光 / 窒素 / オートノミー / 物質分配 / 数理モデル |
Research Abstract |
1.体の一部が被陰された場合、個体の成長速度を最大化するにはどのように物質を分配するべきかという問題を設定し、理論的及び実験的解析を行った。 2.その前段階として、全体が被陰された状況での最適物質分配を求めた。この場合、極端に根が少ない分配が最適であり、現実に報告されている林床での物質分配を定性的にはよく説明することができた。現実の光分布を測定し、ヤマグワの稚樹を用いて定量的なテストを行ったところ、現実の物質分配はほぼ理論的に最適なものに近いことが明らかとなった。 3.次に、生育期間中に被陰されたシュートから被陰されていないシュートへの同化産物の転流、または窒素の転流が、全体の成長速度を上げるのかどうかについて解析を行った。これらの効果は多少あるものの、限定的であった。そのメカニズムは次のようなものであった:被陰されたシュートの生産性は低く、これが転流されたとしても、生産性の高い被陰されていないシュートの成長をそれほど改善することはできない。窒素についても同様に説明される。この結果は、「シュート間での転流が見られない」という一般的な知見の生態学的妥当性を支持していた。つまり、生育期間中においては、それぞれのシュートが自立的であるというオートノミーによって十分な成長速度が実現されることになる。 4.それに対し、生育期間初期に見られる貯蔵物質を用いた成長においては、できる限り被陰されてないシュートへ物質を分配することが個体全体の成長速度が上がることが予測された。これについては、現在定量的なテストを行っており、2009年の初夏には結果が明らかとなる予定である。
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