2006 Fiscal Year Annual Research Report
クローナル植物のラメットネットワークにおいて「記憶」が成立する可能性の実験的検討
Project/Area Number |
18570027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 準一郎 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 助教授 (00291237)
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Keywords | クローナル植物 / 環境認識 / 認知 / 記憶 / ネットワーク |
Research Abstract |
植物は動物と異なり、脳や神経のような情報処理に特化した器官を持たない。にもかかわらず、植物は自らが置かれた環境(例えば土壌養分条件)を評価し、その環境に適した振る舞いを示す。とくにクローナル植物では、ある地上茎は、その地上茎を栄養繁殖で作り出した親の地上茎が置かれた土壌養分条件を参照しながら自らの形態を決定している可能性が高いことが明らかになりつつある。では、そのような参照の対象となるのは、親など近傍の影響だけなのだろうか。個体全体が置かれている環境を何らかの方法で「記憶」することはないのであろうか。局所からの情報だけで、クローナル植物の適応的な振る舞いが本当にもたらされるのであろうか。個体全体の情報は、個体の振る舞いに影響を及ぼしていないのであろうか。本研究では、一本の地上茎と葉と根からなるラメットと呼ばれるユニットが地下茎などを介して複数結合しているクローナル植物を対象に、そのラメットのネットワークに記憶が成立する可能性について実験的に検証した。本年度は、シミュレーションモデルにより、仮説『クローナル植物では、ラメットのネットワークに、過去にラメットが遭遇した土壌栄養条件に関する連想「記憶」が成立しうる』を検討した。連想記憶モデルを基本モデルに、シミュレーションを行ったところ、ラメットネットワークが一定の条件を満たせば、個々のラメットが存在した場所の栄養条件を、その栄養条件が変化しても、以前の状況を「記憶」しうることが明らかになった。さらに、シミュレーションの結果を実験的に検討するための、カキドオシを用いた予備実験をおこなった。反復数が限られていたため、得られた結果は、予想とは異なっていた。
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