Research Abstract |
【目的】ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘム分解の律速酵素であると同時に,細胞を酸化ストレスかによる傷害から守る細胞保護蛋白である。われわれが経験した世界第一例のHO-1欠損症患者は,持続する発熱,肝腫大,血管内皮傷害による溶血性貧血,DIC様の著明な凝固、線溶系の亢進を認めた,さらには単球系の機能異常も認めた。そこで,今回の研究は,HO-1が血栓形成阻害に果たす役割を末梢血単球,血管内皮細胞(HUVEC)を用いて,明らかにすることを目的とした。【方法】1)ヘミン単独刺激の影響:HUVECにHO-1誘導剤であるヘミン(100μM)を添加し,2〜8時間培養後HO-1,組織因子(TF),PAI-1,トロンボモジュリン(TM)の各mRNA量を測定した。2)TNF-α刺激に対するHO-1の効果:HUVECにヘミンを添加した群と添加しない群を作製し6時間培養後洗浄,その後さらにTNF-α(10ng/ml)を添加し0.5〜3時間培養後,HO-1,TF,PAI-1,TMの各mRNA量を測定した。それぞれのmRNAは細胞からtotal RNAを抽出後,リアルタイムPCR法を用いて測定した。【結果】1)ヘミン単独刺激により,HO-1,TF,TM mRNA発現は増加し,PAI-1 mRNA発現は低下した。2)ヘミン刺激群では,非刺激群と比べてHO-1,TM mRNA発現は増加し,TF,PAI-1 mRNA発現は低下した。【考察】ヘミン刺激でHO-1を誘導した後,炎症性サイトカインであるTNF-α刺激を加えたところ,HO-1を誘導していない群に比べてTM mRNA発現は増加し,TF,PAI-1 mRNA発現は低下した。以上の結果より,炎症性ストレス下において血管内皮細胞でHO-1が高発現していると,TF,PAI-1 mRNAの発現が抑制され,またTM mRNAの発現も促進され,結果として血栓形成抑制作用を示す可能性が示唆された。
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