2006 Fiscal Year Annual Research Report
大血管症と細小血管症・微小血管障害に対するアディポネクチンの有効性に関する研究
Project/Area Number |
18590780
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小島 淳 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (50363528)
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Keywords | アディポネクチン / 虚血性心疾患 / 冠動脈プラーク / 血管内超音波 / Virtual Histology / 喫煙 |
Research Abstract |
本研究の目的は大血管から細小・微小血管レベルに至るまで、アディポネクチンの作用や有効性を臨床的に明確にし、虚血性心疾患における日本人のための最適な治療方針を見いだすことである。平成18年度はアディポネクチンと大血管症に関する臨床研究をおもに行ってきた。冠動脈の脆弱化したプラークが破裂して急性冠症候群が発症するため、脆弱化したプラークを安定化させることが重要であるものの、現在のところ事前に脆弱化したプラークの存在を知りうることは困難である。一方、冠動脈造影によりプラークの辺縁などからcomplexityを認識できるが、complex lesionが意味するところは脆弱化したプラークが破裂したことを予想させる。よって脆弱化したプラークの存在を示唆するマーカーを見いだすことができれば臨床的に大変有用となる。冠動脈プラークの脆弱性とアディポネクチンとの関連を調べるために、男性207例(安定狭心症152例と急性冠症候群55例)のアディポネクチンレベルに対する冠動脈造影上のcomplexityについて検討した。安定狭心症患者において、冠動脈にcomplex lesionを有する(n=60)ほうがsimple lesion (n=92)を有するよりもアディポネクチンレベルは有意に低下していた(4.14[2.95-6.02]vs5.27[3.67-8.12]μg/mL, p=0.006)。多変量解析では、アディポネクチンレベルは独立してcomplex lesionと関係していた(オッズ比:0.514、95%CI:0.278-0.591、p=0.034)。特に安定狭心症患者よりアディポネクチンレベルが低い急性冠症候群患者において、複数のcomplex lesionを有するほうが1個のcomplex lesionを有するよりも有意にアディポネクチンレベルは低下していた(3.26[2.26-4.46]vs4.21[3.36-5.411μg/mL, p=0.032)。以上の検討より、低アディポネクチン血症は脆弱化した冠動脈プラークが存在することが示唆された。低アディポネクチン血症を特徴とするメタボリックシンドローム患者において、急性冠症候群の発症をアディポネクチンレベルが予知できる可能性を見いだしたため報告した(J Am Coll Cardiol.2006;48:1155-1162..)。しかしプラークの脆弱性の判断が冠動脈造影によるため、やや正確性を欠いている。そのため、冠動脈プラークの性状を識別できる特殊な血管内超音波であるVirtual Histologyを用いて引き続き検討している。現在解析中であるが、冠動脈造影とは異なり狭窄が明らかではない部分においてもプラークが存在しており、冠動脈の一部分だけではなく冠動脈全体を評価するため、より精度を増して検討することができる。これによりアディポネクチンと冠動脈プラークの組成との関連が明らかになり、今後の前向き試験や内科的治療に大いに役立つことが期待される。一方、喫煙者のアディポネクチンレベルは低下しているという報告がこれまでにいくつか散見されるが、実際に禁煙をすることでアディポネクチンレベルが上昇することを最近見出した。しかしアディポネクチンレベルはさまざまな因子が影響するためにこれらの関与を十分に考慮する必要があり、現在さまざまな因子の変化率などを算出し、さらに多変量解析を行い、禁煙の重要性を検討しているところである。
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Research Products
(1 results)