Research Abstract |
本年度は,個別式での描画調査を実施することを第一の目標にし,あわせてクラス集団や描画者の特性が,どのように動的学校画描画に反映されうるのかを検討した。 申請時に記載した研究1として,相談指導学級(適応指導教室)に通級中の児童生徒と不登校のケース(精神科クリニック受診)を対象に個別的な面接と描画による調査を行った。また,対照群として公立の小学校30名の児童を対照に個別での描画施行と調査を行った(調査期間は,平成18年8月〜平成19年2月まで)。描画内容については,これまでの研究で用いたスコアリング表に基づき,符号化して統計解析を行った。不登校生徒の調査人数は計25名(平均年齢13.27歳)で,不登校開始学年は中1が最も多く(46.2%),ついで小学6年生(19.2%)の順であった。 不登校ないし不登校傾向にある児童生徒の動的学校画と,対照群との間に見られる差違と,その特徴については,次の通りである。(1)現在不登校の状態にある児童生徒は,対照群の児童・生徒よりも,足の省略が多く,不登校生徒の半数以上の52%に見られた。(2)自己像の表情がよりネガテフィブであり,広い範囲の背景の塗りつぶしがより多く見られた。(3)適応指導教室に通級している児童生徒は,現在通っている適応指導教室の場面よりも(32.0%),本来所属している小学校や中学校のクラスの様子をより多く描いていた(56.0%)。だが,一方で過去に属していた学校,例えば中学2年生の子が,小学校5年生の時代を描くなど,過去の場面を描く生徒が3人ほど見られたのが,対照群の描画との相違であった。 以上のことから,動的学校画は,不登校に陥っている児童生徒のうつ感情や,居場所の無い孤独や不安を投影しうること,不登校の児童生徒にとって,最も描くことを受け入れ易い,良い思い出の残る学校場面や学校における理想的な自己を描いていることが考えられた。適応指導教室に通級している不登校の子どもは,本来所属する学校での生活を無意識的には望んでいることが伺える。
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