2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740244
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
益子 岳史 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部, 宇宙航空プロジェクト研究員 (70415917)
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Keywords | マランゴニ対流 / パターン形成 / 流体不安定性 |
Research Abstract |
微小重力下実験において観察された、マランゴニ対流中で気泡が等間隔に整列する現象のメカニズムとして、(a)気泡の表面流動、(b)気泡の排除体積効果、(c)対流自身の周期構造形成を予想した上で、本年度はそれぞれの効果を確認するための実験を実施した。効果(a)の確認のためには、まず作動流体と同密度に調整した液滴を準備する必要があるが、数十種類の液滴についてテストを行ったところ、安全性、均一性、作動流体への不溶性等の条件をクリアするものは得られておらず、現在のところ(a)が気泡整列に及ぼす影響ははっきりしていない。効果(b)の確認のために、表面コーティングにより作動流体と同密度に調整した固体球を対流中に投入する実験を行ったが、(b)は気泡整列には無関係であることを示唆する結果が得られた。効果(c)については、トレーサー粒子を用いた流体運動の可視化を行ったが、この実験では以下のような興味深い現象が観察された。すなわち、マランゴニ数Ma(対流強度)が低い場合にはトレーサー粒子が対流渦の中心付近に集まってリング状の凝集パターンを形成し、Maの増大とともにこのリングも成長するが、最終的にはリングに亀裂が入り崩壊する、というものである。逆にMaを減少させた時にはリング状パターンが再形成された後、縮小していく、という逆プロセスが観察された。この現象は、対流自身の構造が気泡整列に影響を及ぼすことを示唆しており、今後対流中に液滴や固体球を投入し、亀裂の位置や周期性と気泡の配列の関係を調べる実験を実施することを強く動機付ける。さらに、Maを制御変数としてリング構造の崩壊や再形成の条件や履歴依存性を系統的に調べることで、気泡整列のメカニズム解明にとどまらず、より基礎的なレベルでマランゴニ対流の不安定性の理解が図れる可能性があるため、この現象は来年度の研究につながる注目すべき観察結果である。
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