Research Abstract |
半導体微小共振器に量子ドットを埋め込んだ系は,量子情報演算素子としての観点から注目を集め,共振器の性能を表すQ値を大きくすることによって,強結合状態を実現し,そこにビット情報を持たせようとする試みが盛んである.しかしながらQ値を大きくすることと強結合状態を得ることは必ずしも同値ではなく,実際の系では不可避である散逸の効果を考慮すると,Q値の大きい弱結合状態が可能になることが理論的にわかった.その領域での自然放出スペクトルを解析的に計算することによって,スペクトル線幅に対する共振器のQ値依存性を求め,Q値が小さい場合に正当化されるパーセル効果との接続を得た.また,同じくQ値が大きい弱結合状態で,弱結合であるにもかかわらず,スペクトルが強結合の特徴であるタブレット構造を示す場合があることを示し,その起源が,量子干渉効果にあることが明らかになった.この干渉によって,量子ドットからの自然放出が抑制され,いわゆる量子制御の一例になっている.これらの解析は,量子ドットを2準位系に近似し,微小共振器中の共振モードを1つに仮定して,両者が双極子相互作用によって結合しているという模型に依るものである.散逸の効果を取り込むには.マスター方程式に拡張する必要があるが,本模型においてはその効果を取り込んだ場合にも解析的な解を得ることが可能になる. 一方,具体的な共振器系を想定し,数値シミュレーションをおこなうことによって,模型に含まれるパラメータを決定し,それに基づいた解析も行った.系としては微小球が2つ連結したものを共振器と考え,この中の電場分布を計算する.球内壁で全反射を繰り返すことにより,ある部分に特異的に強く電場振幅が集中することがわかった.この場所に2準位系が置かれた場合の共振器電磁気学パラメータを数値データに基づくフィッティングで求め,模型に依る計算結果に代入し,2連球共振器の性能を議論した.これらの方法は,共振器デザインを行う際にも重要になると考えられる.
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