2006 Fiscal Year Annual Research Report
『源氏物語』を起点とした平安朝物語文学における「老い」に関する総合研究
Project/Area Number |
18820044
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
外山 敦子 愛知淑徳大学, 文学部, 講師 (50434626)
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Keywords | 国文学 / 平安朝物語文学 / 『源氏物語』 / 老い |
Research Abstract |
1.『源氏物語』の「老い」に関する研究成果の発表 『源氏物語』の<老いゆく人々>に注目し、「老い」を物語生成の生動力たらしめる『源氏物語』のありようを明らかにする。具体的には、左大臣と致仕大臣(かつての頭中将)父子を対象とした。 致仕大臣の長男で将来を嘱望される柏木は、女三の宮との密通が光源氏に知られ、人々に惜しまれながらその生涯を終えた。柏木巻では、密通の事実を知る光源氏や女三の宮の苦悩と共に、原因も分からぬまま愛する子を失おうとしている父致仕大臣の激しい狼狽と嘆きを繰り返し語っている。 『源氏物語』のなかで<子を亡くす父>となるのは、致仕大臣の他に一人しかいない。それが他でもない致仕大臣の父左大臣である。彼もかつて、左大臣家繁栄の礎となるべき娘葵の上を亡くした。葵の上と柏木は、共に生まれたばかりの我が子(それは同時に光源氏の子でもある)を残して亡くなった。早世した若者の父たちは、共に我が<老い>を嘆きつつ子を失った欠落感に打ち拉がれる。対する光源氏は、彼らから新たに子を与えられ、好むと好まざるとに関わらずその胸に新たな生命を抱かざるを得ない。老いることを許されない光源氏のありようが、左大臣と致仕大臣父子との対比から、より一層明確になると考えられる。 本研究は、古代文学研究会2007年3月例会(於:愛知淑徳大学)で発表し、席上でいただいた様々な指摘を踏まえ、現在論文執筆中である。 2.平安朝物語文学に表れる「老い」の<ことば>に関する基礎的データベースの作成 『源氏物語』以外の主な平安朝物語文学に表れる「老い」の<ことば>に着目し、データベース化する。現在作業進行中。翌年度の研究のための基礎資料とする予定である。
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