2019 Fiscal Year Annual Research Report
先端医療分野における欧米の生命倫理政策に関する原理・法・文献の批判的研究
Project/Area Number |
18H00606
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
小出 泰士 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30407225)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅見 昇吾 上智大学, 外国語学部, 教授 (10384158)
秋葉 悦子 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (20262488)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 特任教授 (30125679)
久保田 顕二 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50261392)
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50303714)
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 教授 (60350930)
本田 まり (眞鍋まり) 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60384161)
香川 知晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (70224342)
甲斐 克則 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80233641)
横野 恵 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80339663)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
奥田 純一郎 上智大学, 法学部, 教授 (90349019)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生命倫理 / 医療倫理 / 安楽死 / ゲノム編集技術 / 患者の権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に主に取り組んだ個別的なテーマは、ゲノム編集技術と終末期医療・安楽死に関する法的・倫理的問題である。そのほか、新型出生前診断や子宮移植やフランス生命倫理法の改正に関する法的・倫理的問題にも取り組んだ。 ゲノム編集技術に関しては、今日までに世界で提出されている様々な論点を整理した上で、特に、フランスと日本における倫理的考察と実際の対応について研究した。その結果、ゲノム編集技術の使用について、基礎研究については奨励し、臨床応用についてはゲノム編集の禁止が共通してみられた。技術の安全性への懸念もさることながら、子孫のゲノムを技術によって組換えることの倫理問題についても社会のコンセンサスは得られていない。 終末期医療・安楽死に関しては、オランダから安楽死審査委員会の教授を招聘し、東京と京都でシンポジウムや講演会を開催し、オランダにおける安楽死の考え方を紹介いただいた。オランダでは、死期が迫っていなくても、認知症の患者でも、安楽死が実施されている現状について、日本で初めて正しい理解が得られた。オランダでは、病理的疾患に基づく耐え難い身体的及び精神的苦痛がある場合に、本人の意思に基づき、安楽死を実施することができる。しかし、それはあくまで医療の善意に基づくものであって、自己決定の過度の尊重によるものではない。多くの日本人は理解しがたいかもしれない。 新型出生前診断に関しては、諸外国では、患者の知る権利の尊重を前提に実施されている。それに対して、日本の場合は、患者の権利が保証されておらず、患者に正確な情報提供やカウンセリングがなされないままに、無認可検査施設において無責任に検査が行われているという憂慮すべき現状がある。また、子宮移植に関しては、今後の検討が必要である。 その他、患者の権利に関して、哲学的検討がなされた。今後生命倫理を考えていくうえで、必要不可欠な考察である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究のテーマは、先端医療分野における欧米の倫理政策に関する批判的研究をするということである。 ゲノム編集技術については、イギリス、フランス、ドイツ、EU、国際サミット、日本における考え方を精査し分析した結果、倫理政策に関しては、技術的な基礎研究は推進し、臨床応用については安全性が確認できるまで控える、というほぼ共通の方向性が見出だされる。 終末期医療・安楽死については、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、韓国等の考え方(思想、価値観、習慣など)や法律の分析により、各国による政策の微妙な違いが見いだされる。 その他、生殖補助医療、子宮移植、新型出生前診断などに関しても、フランス、ベルギー、EU、北欧をはじめ、諸外国の法規制など倫理政策に関する情報の収集と分析を進めている。 最後に、臓器移植やES細胞、iPS細胞をはじめとする人体を構成する細胞・組織・臓器の治療への利用に関する生命倫理的な考え方と法規制に関しても、ドイツ、フランス、スペインなど、各国の状況の調査・分析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、新型コロナウイルスの影響で、諸外国との行き来が途絶えている状況だが、インターネットやオンライ会議を利用するなどして、しばらくは文献調査と意見交換を中心に研究して、諸外国と自由に行き来して外国の研究者たちと意見交換できる時を待ちたい。 フランスでは、今年度前半にも生命倫理法の改正が行われる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、国会での審議は中断されたままである。この改正は、世界の範として世界中が注目している言ってよい。それについては、フランスから倫理委員会委員を招聘してシンポジウム等で意見交換する予定であったが、まだ見通しは立っていない。これについても、文献調査を進め、直接意見交換できる時に備える。特に生殖医療の倫理について大きな思想の転換が図られる。子宮移植をはじめとして、生殖補助技術の進歩に伴い、その技術使用が独身女性や女性同性愛カップルにまで拡張されていくことは、重大な倫理的問題を引き起こす。フランスの世論も真っ二つに分かれている。この問題については、世界も日本も対岸の火事では済まされないので、今後、フランスの動向を見守るとともに、世界の思想や法規制に関する情報の収集と分析に努めたい。 その他、ゲノム編集技術や多能性幹細胞を用いた再生医療や脳神経科学(BMIなど)の倫理問題についても諸外国の動向を分析する予定である。
|
Research Products
(56 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 正義論2019
Author(s)
宇佐美 誠、児玉 聡、井上 彰、松元 雅和
Total Pages
294
Publisher
法律文化社
ISBN
978-4-589-04028-2
-
-