2019 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット研究倫理の構築-倫理問題の考察と倫理ガイドラインの提案
Project/Area Number |
18H00608
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
大谷 卓史 吉備国際大学, アニメーション文化学部, 准教授 (50389003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
久木田 水生 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10648869)
神崎 宣次 南山大学, 国際教養学部, 教授 (50422910)
西條 玲奈 京都大学, 文学研究科, 教務補佐員 (10768500)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インターネット研究倫理 / SATORIプロジェクト / 倫理影響評価(EIA) / 研究倫理審査 / 倫理ダンピング / ELSI / RRI / ICTの職場への応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州SATORIプロジェクトの報告書および欧州標準提案書を検討・分析した。SATORIプロジェクトは、欧州FP7において研究倫理審査および倫理影響評価(EIP)に関して主要国の状況を調査し、欧州標準を提案したプロジェクトである。上記報告書と標準提案の検討のため、この背景となる欧州の研究・イノベーション戦略を概観し、欧州における科学技術と社会との関係を調整する規範的概念である「責任ある研究・イノベーション(RRI)」を検討した。同標準提案の背景には、専門分野や国際的な研究倫理規制の不整合に乗じて、規制の弱い国や分野を濫用して危険な研究・イノベーションを行う「倫理ダンピング」を防止する動機があることを発見した。倫理ダンピング概念を活用し、2020年度以降インターネット研究倫理の問題に取り組んでいる。また、標準提案書(CWA 17145:2017-1および-2)および、この提案書の基礎となる研究倫理審査と倫理影響評価に関する報告書概要を翻訳した。 インターネットなどの情報技術を媒介する人間活動からデータを収集・分析して活用するテクノロジーは、職場の労働監視や行動分析、それらを踏まえた管理に活用されるようになっている。ICTによる職場監視と職務専念義務に関して、最近の応用例と労働判例を踏まえて、過剰な職場での統制に結びつくICT活用を批判する論文を発表した。インターネット研究倫理は、第一には研究の場面での被験者・研究対象者への危害やリスクを防止することが目的であるが、上記RRI概念に見られるように、実社会への適用(イノベーション)とセットで考える傾向が強くなっている。本研究の趣旨も同様のものである。 さらに、ロボットや人工知能、ソーシャルメディア、知的財産権(著作権)の法的・倫理的問題について、個別に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第一に、コロナ禍によって2020年3月に予定していた発表が翌年度にずれ込んだ。この発表では、研究倫理審査委員会および倫理影響評価(EIA: Ethical Impact Assessment)の欧州標準提案書およびその背景となるプロジェクト(SATORIプロジェクト)に関して分析した結果を報告する予定であった。2020年7月に電子情報通信学会技術と社会・倫理研究会で報告した。 第二に、インターネット研究とデータサイエンス・人工知能研究等に共通する問題が存在することから、現在のデータを研究対象や人工物の「材料」とする研究・イノベーション全体に研究範囲を広げ、考察を進めるよう方針を変えたためである。SATORIプロジェクトの分析も同様の意義がある。 なお、データを研究対象や人工物(例、機械学習モデル)の「材料」とする研究・イノベーションは、研究対象や研究関心が従来の人文・社会科学や生物医学・保健科学等の分野と大きく重なる一方で、数学的(統計学等)・工学的手法を活用する点に、大きな特徴がある。この結果、研究の過程およびその社会での活用・適用において、大きな価値を生み出すとともに、研究対象者の自律の権利の侵害やプライバシー侵害、差別等の問題を起こす可能性が指摘されている。こうした共通の問題を考察するため、エマージングテクノロジーに関する倫理影響評価(EIA)やELSI(科学技術の倫理・法・社会的側面に関する研究と実践)、研究・イノベーションの倫理審査、RRI(責任ある研究・イノベーション)に関して調査を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
SATORIプロジェクトの分析結果を踏まえて、データを研究対象や人工物の「材料」とする研究・イノベーションという大きな枠組みの中で、インターネット研究倫理に関する調査研究を継続して推進する。ELSIやRRIなど、現在社会的・学術的に注目されている科学技術ガバナンス概念について調査・考察しなければ、将来的に中長期有効なインターネット研究倫理を設定するのは困難と思われる。データサイエンスや人工知能、インターネット研究のELSIやRRIなどに関しては、ワークショップやシンポジウム等を通して、国内の関係する研究者から最新の知見・情報を取得することとする。 こうしたインターネット研究の背景となるデータの倫理に関する知見・情報を蓄積・分析するとともに、インターネット研究学会(Association of Internet Researchers)の倫理ガイドラインの翻訳と分析を進める。同学会のガイドラインは、1.0は通知の上研究・教育等での利用が可能、2.0はCC-BYでの配布である。翻訳した成果はできるだけ公開する。
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Research Products
(13 results)
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[Book] 知的財産法学の世界2020
Author(s)
吉備国際大学大学院知的財産学研究科編集局編集
Total Pages
461
Publisher
マスターリンク
ISBN
978-4-905-44320-9
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