2018 Fiscal Year Annual Research Report
『阿毘達磨集論』に対するチベットの注釈伝承に関するXMLによるテキスト分析
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18H00610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 晃一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70345239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 裕史 広島大学, 文学研究科, 教授 (00735871)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 阿毘達磨集論 / カダム全書 / チベット仏教 / XML |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は『阿毘達磨集論』(Abhidharmasamuccaya)に対する『カダム全集』所収のチベット撰述注釈書を研究対象とし、XMLにより構造化された電子テクストの構築を目指すものである。『阿毘達磨集論』はサンスクリット語であらわされたインド仏教文献であり、それがチベットに伝わり、現地の言語に翻訳され、さらにチベットの学僧たちによって、チベット語で注釈が施された。そのような注釈が十数点現存しており、その多くが新出資料である『カダム全書』に収められている。XMLは「Extensible Markup Language(拡張可能なマークアップ言語)」のことで、これにより単純な電子テキストに様々な情報を付与し、文研研究にとって有意義な電子テキストの構築が可能になる。 2018年度には東京大学研究班と広島大学研究班の間で数回に渡る打ち合わせを行い、それぞれが担当するチベット撰述注釈文献計2点の選定、作業工程の組み立てと確認、人員確保を行った。 東大研究班では、『カダム全集』所収の研究対象となる文献の購入および高画質撮影を行い、それを下に電子テクスト化とXMLによる構造化記述に着手した。XMLによる構造化にあたって、現在、人文情報学の分野で主流となっているガイドラインTEI P5に準拠し、特に注釈対象である『阿毘達磨集論』のチベット語訳と『カダム全書』所収の注釈を紐づける手法について考察した。その成果は2018年9月に東京で開催されたカンファレンスTEI2018において、研究代表者と分担者の連名で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の研究班では、『カダム全集』所収の研究対象となる文献であるチョムデン・リクペーレルティの注『阿毘達磨集論釈』(『カダム全集』第二輯、第57巻、314葉)の購入および高画質撮影を行い、それを下に電子テクスト化とXMLによる構造化記述に着手した。また、データ管理上の安全性確保のための機材を購入し、研究インフラストラクチャー構築を図った。 しかし、研究分担者の所属機関の地域で起きた水害のため、研究分担者が大学にアクセス不可能な状況になり、研究の進行に支障が生じ、計画していた作業が予定より遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究実施の遅れを取り戻すため、研究代表者は所属機関での特任研究員を採用し、データ入力作業とデータの管理に従事してもらうこととした。 テクストの入力は、東大研究班が引き続き、チョムデン・リクペーレルティの『阿毘達磨集論釈』の続きを担当し、広大研究班が新たにションヌ・チャンチュプの注(『カダム全集』第二輯、第40巻、268葉)を担当する。その際にアルバイトを複数名、依頼する。 これと並行して、東大研究班はXMLのスキーマの改良を行い、ホームページ開設の準備をする。基本的には人文系文献の構造化記述の国際的標準として広く使われているTEI P5 ガイドラインに準拠する。しかし、チベット仏教文献は一般的な人文系文献には稀な独特の構造的特徴が含まれているので、それを反映したデータ構造になるように配慮する。 また、注釈対象である『阿毘達磨集論』については、龍谷大学で新資料を参照しながら訳注研究が進んでおり、今後、研究協力の可能性について模索する。
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Research Products
(6 results)