2019 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀序盤の東アジアにおける東洋・西洋の共鳴: 楽器の響きから考えるピアノ文化
Project/Area Number |
18H00623
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小岩 信治 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (90387522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (10184251)
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (10448722)
大角 欣矢 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90233113)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ピアノ / ピアノ製造業 |
Outline of Annual Research Achievements |
大正期までに本邦で用いられて現存するピアノの原物調査を継続した。ベルリンに留学したのち本邦で音楽学者・評論家として活躍した兼常清佐が所蔵していたベルリン・ビーゼ社製アップライト・ピアノを東京都内の私立音楽大学が所蔵しており、当該法人の協力を得てこの楽器の現況調査を10月に実施した。 平行して、本研究の国際的な展開に向けた活動を行った。まず6月から7月にかけて、歴史的ピアノの修復家として知られるエドウィン・ブンクの工房(オランダ)において、2018年のショパン国際ピリオド楽器コンクールで使用された19世紀中盤の歴史的楽器の調査を行った。また12月には、現存する最古のピアノのうち1台を所有するライプツィヒ楽器博物館(ドイツ)を訪問し、歴史的ピアノの収集・保存・修復の取り組みについて情報交換するとともに、20世紀序盤にドイツから日本にもたらされたピアノの定量的な調査について協力を得ることとなった。 本邦のピアノ産業史を検証するとりくみとして、大手ではないピアノ製造会社の記録の調査を開始した。 本研究の成果を含む著作『ピアノの近代史-技術革新、世界市場、日本の発展』が刊行された(井上さつき著、中央公論新社、2020年2月)。また2018年3月に一橋大学で行った一橋大学国内交流セミナー 「シンポジウム 歴史的ピアノと音楽文化 第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールをふりかえる」の詳報が一橋大学言語社会研究科紀要『言語社会』で公開されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の中心である歴史的ピアノの調査を継続的に実施するとともに、ヨーロッパの重要な研究機関等との国際的な協力関係を構築し、他方研究の進展とともに研究計画の枠組みのなかで対応可能な新たな問題設定にも取り組んだ。また研究成果の公開も順次実現している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究者・調査員の国際的な移動を伴う本研究の場合、COVID-19への全世界的な対応によって、今年度の研究計画は大幅な変更を迫られる。研究計画に含まれていた中華人民共和国・大韓民国での調査、当該国関係機関との研究協力については、インターネットを介した情報共有に留まる可能性がある。また国内のピアノ調査についても、見込んでいた調査台数は達成できない可能性が見込まれる。他方、歴史的ピアノのデータベース構築の作業等、調査と関係なく進行できる部分に研究資源を投入することになろう。
|