2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本語母語話者による英語の主語・動詞・時制に関わる文法規則の習得と使用
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18H00696
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
若林 茂則 中央大学, 文学部, 教授 (80291962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 真由美 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (00817067)
穂苅 友洋 跡見学園女子大学, 文学部, 講師 (40817061)
大滝 宏一 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (50616042)
秋本 隆之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 助教 (70824845)
Matthews John 中央大学, 文学部, 教授 (80436906)
山崎 妙 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (90350397)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生成文法に基づく第二言語習得研究 / 形式素性 / 形態統語 / 時制節 / 機能範疇T / 言語の習得と使用のモデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一つの視点(機能範疇T)から、第二言語学習者の心的文法を記述することによって、形態と統語、素性と語彙と形態統語操作、インターフェースと心的処理の関係を明らかにし、モデル化による包括的説明を提案する。特に分散形態論の枠組みで、心的辞書構築、語彙項目・素性配分、形態統語操作、言語モジュール外の心的処理を記述するモデルを提案する。英語の機能範疇Tとその素性の習得には、複数の形態統語現象が関わっており、第二言語学習者は、これらの規則違反に対する敏感度、違反文容認度、文産出の点で、母語話者とは異なる可能性がある。コーパス並びに心理言語学実験による実証的データに基づき、理論的研究を通して、素性再配置、列挙、インターフェース、解釈不可能性などの仮説の妥当性を検証し、母語、インプットの影響、学習可能性について、知識・処理・記憶に基づく原理的説明を試みる。2019年度は、2018年度から進めてきた文献研究に加えて、i)時制節における明示的主語の義務的使用、ii)助動詞・動詞屈折による時制の表示、iii)助動詞・動詞屈折による主語の人称・数の表示、iv)否定節および疑問節における助動詞の使用、v)動詞、目的語、否定辞・頻度副詞の位置関係の「規則」に関して、心理言語学実験によるデータの収集・分析を開始した。英国ヨーク大学およびシェフィールド大学で、英語母語話者からのデータ収集を行なった。また、台湾の国立高雄師範大学および日本の大学で、英語学習者からのデータ収集を行なった。データ収集では、Superlabを用い自己ペース読解速度測定を行った。同時に、英語学習者に対しては熟達度測定のためにOxford Quick Placement Testを実施している。コーパスデータ分析のために、2月に研修を目的とした合宿を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年10月11月には、上述の通り、台湾およびイギリスにおいて、実験を実施し、データ収集を行なった。2020年3月には、コーパスデータ分析のための研修会を実施し、2020年度に向けて順調に準備を進めていた。しかし、コロナ禍により、2020年2月から3月にかけて実施する予定であったデータ収集が実施できなかった。当初計画では、2019年度中には、心理言語学的実験のうち、すべてのパイロット実験を終え、さらに、英語母語話者ならびに日本語を母語とする英語学習者からのデータ収集を全て終える予定であったが、予定通りにはその計画が実施できず、その分の予算は、理論面からのモデル強化のために使用することとした。同時に、コーパスデータに基づく研究を進めるため、研修合宿をおこなって、その準備をした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に収集した日本語を母語とする英語学習者(JLE)のデータが、中国語を母語とする英語学習者とは比べて、熟達度測定テストでは同等と考えられるものの、読解速度に関しては比較が難しいことが判明したため、より熟達度の高いJLEから、データを収集することとした。また、英語母語話者を対象とした実験において、助動詞に関するデータからは、理論上予測された反応が出なかった。これは、自己ペース読解速度測定では、ある種の機能範疇に関する文法的な誤りは、読解速度の遅延反応として表面化しない可能性があることを示している。この発見自体は、心理言語学研究の観点からは興味深いものの、本研究の趣旨には合わないため、そのような結果が出た領域については、実験は継続せず、英語母語話者から当初の予測通りの結果が出た領域に限って、今後実験を進める。したがって、当初は、i)時制節における明示的主語の義務的使用、ii)助動詞・動詞屈折による時制の表示、iii)助動詞・動詞屈折による主語の人称・数の表示、iv)否定節および疑問節における助動詞の使用、v)動詞、目的語、否定辞・頻度副詞の位置関係の「規則」の5つの領域を調査するためのマテリアルを準備したが、2020年度以降は、このうちの3つ、すなわち、i)時制節における明示的主語の義務的使用、ii)助動詞・動詞屈折による時制の表示、iii)助動詞・動詞屈折による主語の人称・数の表示に対象を絞って、実証的研究を行うこととする。また、コーパスデータについては、データの性質上、本研究に使用できる部分がかなり限られることが判明したため、補助的なものとして今後活用を考えることにした。
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