2018 Fiscal Year Annual Research Report
16~17世紀における銀の移動と情報伝達:グローバル・ヒストリーの視点から
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18H00699
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森脇 優紀 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任助教 (90733460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 政満 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (50135183)
川村 信三 上智大学, 文学部, 教授 (00317497)
丸橋 充拓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (10325029)
伊藤 幸司 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (30364128)
小島 浩之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70334224)
平山 篤子 帝塚山大学, 経済経営学部, 非常勤講師 (20199102)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 世界システム論 / グローバル・ヒストリー / 大航海時代 / 比較・交流史 / 分析化学 / 料紙研究 / 古文書学 / 経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、研究集会を2回行った。第1回目は、5月20日に東京大学で実施し、研究の全体的な方向性をすり合わせ、当該年度の研究計画と役割分担を確認した。第2回目は、12月15日に九州大学西新プラザにて実施し、それまでに実施した文書料紙調査および銀資料分析の調査結果報告や、銀の交易・移動に関する研究成果報告を行い、全体で議論を深めた。 現地調査による関連資料の蒐集と分析、および古文書学の手法による文書料紙分析については、3カ所で実施した。まず、7月に京都外国語大学付属図書館にて、「日本関係イエズス会文書」3点の文書の内容および形態的調査を実施した。8月には、島根県における銀関係資料の調査と石見銀山の巡見を実施した。初日は、島根県古代出雲歴史博物館にて丁銀等の資料を、大田市の中村館にて石見銀山関連資料を熟覧した。2日目には、石見銀山遺跡を巡見し、石見銀山資料館および石見銀山世界遺産センターでは石見銀山関連資料を熟覧の上、資料・情報を収集した。3月には、イタリアのローマ・イエズス会文書館(Archivio Romanum Societatis Iesu)にて、イエズス会宣教師の現地報告書の文書調査および文書料紙分析を行った。分析化学の手法による銀の分析については、東京大学大学院経済学研究科所蔵の銀資料(丁銀、切銀、小銀、メキシコ銀等)のうち計61点について、東京芸術大学にて可搬型蛍光X線分析装置やエネルギー分散型X線分析装置を用いて分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都外国語大学付属図書館とローマ・イエズス会文書館での料紙調査によって、16・17世紀の日本におけるイエズス会の現地報告書に用いられた紙の多様な紙質データを集積でき、本研究課題に則した料紙調査方法の基準を確立することができたため。とりわけローマ・イエズス会文書館においては、作成時期や文書の種類・機能(個人書簡、年報や訓令などの公式文書)が異なる資料を厳選して料紙調査を行うことで、時期や文書の種類・機能による紙の使い分けがあった可能性を見出した。このことによって、16・17世紀当時世界中を移動していた宣教師が用いた紙の種類や、用途による紙の使い分けの一端を把握することができ、16・17世紀のグローバル化世界における紙の流通を知る上で今後の研究の基盤とすべき重要なデータを得ることができたため。 一方、銀の分析についても、当初の計画通りにデータの蓄積をすすめることができたため。また、石見銀山での現地調査を通して、現地の石見銀関係の情報やデータを収集できたことによって、東京大学所蔵分との比較分析を進めるための基盤を築けたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、全体的な研究集会を年度当初に開催し、2018年度末に実施したローマ・イエズス会文書館での調査に関する情報を全体で共有した上で、2019年度の役割分担および調査についての調整をはかる。 現地調査については、2018年度に引き続き、ローマ・イエズス会文書館において、イエズス会宣教師の現地報告書類の内容分析と料紙の観察・調査を進める。また、アジアとの交渉史料や植民地時代の文書を豊富に所蔵するスペイン(スペイン王立歴史図書館など)、ポルトガル(トーレ・ド・トンボ国立文書館、海洋歴史文書館など)、中国(マカオ档案館など)、イタリア、フィリピンなどの機関に調査を打診し、承諾の得られた機関から順に、現地にて文書原本からの内容および料紙調査を実施する。国内については、石見銀山関連の資料・情報収集を継続し、京都外国語大学付属図書館にて「日本関係イエズス会文書」の料紙調査を引き続き実施する。 銀の分析調査については、2018年度からの継続で、東京大学大学院経済学研究科所蔵の銀資料について、可搬型蛍光X線分析装置やエネルギー分散型X線分析装置を用いて分析し、その結果を基に解析を行う。また2019年度は、新たにメキシコの鉱山や貨幣(ペソ貨)に関する化学分析の研究結果についての情報収集を計画している。ここで得られたデータを基に、日本銀と外国銀を物的組成の面から比較研究する。その際、これらの研究において実績のあるメキシコ自治大学の歴史研究所の研究者にアプローチする予定である。
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