2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世・近世における若狭湾沿岸海村の生業および交易・交流に関する総合的研究
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18H00710
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 裕子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (20635122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋村 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00414037)
渡辺 尚志 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10192816)
春田 直紀 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80295112)
市川 秀之 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80433241)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本中世史 / 日本近世史 / 若狭湾沿岸海村 / 地域史 / 生業史 / 漁業史 / 村落史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、若狭湾沿岸海村の生業および交易・交流に関する研究を推進するため、一定地域における重点的な歴史学・民俗学・地理学的な調査と、若狭湾沿岸海村に現存する古文書の所在確認および閲覧・撮影調査を実施することを主要な目的としている。 平成31年度は、7月13日に一橋講堂(東京都千代田区)において、平成30年度の調査・研究の総括と、本年度の調査・研究計画および概要について議論する研究会議を実施し、8月23~25日の日程で、福井県南越前町河野・今泉・赤萩地区において現地調査を実施した。本調査では、調査員を古文書調査班・現地復元調査班・石造物班に分け、古文書班は調査地に現存する中世から近現代に至るまでの古文書・絵図類の閲覧・撮影作業を、現地復元調査班は各地区の地名や村境の場所、生業の方法などを聞き取りながら、実際の現地踏査を、石造物班は調査地とその周辺の散在する石造物の銘文調査をそれぞれ実施した。 一方、古文書の所在確認・撮影作業については、本年度5月11~12日、3月16~18日に福井県敦賀市・小浜市・美浜町において重点的に実施し、「西福寺文書」「栗駒家文書」「三善家文書」「安倍家文書」「河野家文書」「明通寺文書」「龍泉寺文書」「大橋家文書」の調査・撮影作業を行った。また、福井県立歴史博物館に預けられている南越前町今泉地区の「浜野家文書」については、5月の調査で全点の撮影作業が終了し、現在文書目録作成作業中である。 さらに本年度は、平成30年度の重点調査地であった美浜町日向・早瀬・久々子地区の補充調査として、調査地域の生業や周辺村との関係を色濃く残す祭礼についての民俗調査を実施した。具体的には、4月8日の宇波西神社例祭、7月27~28日の水無月祭(早瀬)・9月8日八朔祭(日向)の現地調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の重点調査地である南越前町河野・今泉・赤萩地区は、歴史的に山の生業をめぐって相論が発生していた地域であったが、現存する古文書および絵図の調査と、それをもとにした現地における聞き取り調査と現地踏査によって、係争地となっていた具体的な場所とその生業、及び係争地に対する各地区の人びとの認識について把握することができた。特に、これまで曖昧であった係争地の境目と、そこでの生業について詳細に確認することができたことは、本調査の成果であったといえる。また、河野には太閤検地帳が現存しているが、その検地帳に記されている小字地名についても、現地において田んぼを所持し、実際に作っていた人から聞くことできたことにより、かなり詳細に確認することが可能となった。 また、小浜市・敦賀市・美浜町での古文書所在確認と撮影作業については、一部、古文書所蔵者との関係で閲覧・撮影作業が叶わなかったものもあるが、おおよそ当初の計画通り、順調に撮影作業および目録作成作業を推進している。 さらに、昨年度の調査地であった美浜町日向・早瀬・久々子地区については、当該調査地の生業や交易・交流に関する歴史的状況をさらに掘り下げるために、周辺村にも調査対象地を広げ、古文書の収集と聞き取り調査を実施し、現在報告書をまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、小浜市田烏・矢代・志積・仏谷地区における重点調査と、福井市の沿岸地域および高浜町・おおい町における古文書所在確認・撮影作業を実施していく。重点調査は8月末から9月上旬頃に実施する予定であるため、その準備のため、いまのところは7月中に、本年度の研究の総括と、令和2年度の調査計画・目的について議論する研究会議を実施する予定である。ただし、コロナウイルス感染症の状況次第では、重点調査は9月以降に延期し、研究会議についても、対面ではなくオンラインでの会議となる可能性もある。重点調査においては、これまでと同様に現存する古文書の博捜と、現地の歴史的景観および歴史的習俗についての復元を試みるため、古文書調査と聞き取り調査を中心に組み立てていく。 また、古文書所在確認・撮影作業については、通常は5月頃から開始するところであるが、現状に鑑み9月以降に実施していく。その間は、福井県文書館と連携し、県文書館で推進している所在確認の結果をもとに、可能な限り撮影調査ができるようアクセスしていく。同時に、石造物調査についても、今年度は美浜町・小浜市とともに福井市においても実施していく。 さらに、平成30年度の重点調査地である美浜町については、祭礼の民俗調査を実施してきたが、令和2年度も、もし祭礼が実施されるのであれば、できる限りその時期に補充調査を実施したいと考えている。
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Research Products
(16 results)