2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐川 英治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00343286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮 秀陵 獨協大学, 国際教養学部, 准教授 (30802011)
河上 麻由子 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (50647873)
小尾 孝夫 大東文化大学, 文学部, 准教授 (90526675)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中国史 / 古代史 / 東アジア史 / 古代末期 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は国際シンポジウムを予定していたが、コロナのために延期し、2021年9月にオンラインで「魏晋南北朝国際学術講演会」として海外の研究協力者を招いて講演会を実施し、2022年度に成果の取りまとめをおこなった。王安泰「魏晋南北朝の「漢代の記憶」とその変化」は、漢代の記憶が魏晋以降にどのように継承されていったかを王朝の正統性、反乱者、職官制度、漢代十三州システム、爵制の継承といった事柄に焦点を当てながら中央官制や地方行政、爵制などの制度に対する漢朝遺制の影響力が徐々に低下していった過程を明らかにした。アンドリュー・アイゼンバーグ「梁における戦争と世代交代の影響」は、梁の政治に軍事がもたらした甚大な影響について論じた。6世紀はじめの梁の十八班制は、これまで南朝の貴族制や官僚制の発展の問題として論じられてきたが、実は北魏との戦争が大きな影響を与えていた。梁の武帝が男系皇族を各地の要所に配置して半世紀近い安定的な体制を築くことができたのもこうした軍事的緊張を利用できたからである。梁の国内政治にみえるものも実は北魏の影響を深く受けていたことを明らかにした。魏斌「北朝晩期の寺院と政治文化」は、唐の大雲寺や開元寺など皇帝の勅命によって国内各州府に設置された官立寺院の先蹤に北斉の定国寺と隋の興国寺があることを指摘し、その起源について考察した。唐の官立寺院が各州府に一律に置かれたのに対して、北斉の定国寺と隋の興国寺は選択的に置かれた。しかし、各地に国家の安寧と繁栄を願ってつくられたという点は同じである。その淵源は漢代に各地に置かれた郡国廟や戦没者を祭って戦地に築かれた祭堂に求めることができる。またこうした寺院は南朝にはなく、北朝における王権と仏教のかかわり方を受け継いでいることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナによる影響は受けたが、海外の研究者との共同研究を進めることができ、「4、5世紀を転期とする中国社会の変容」、「3~8世紀における仏教の浸透と中華の変容」、「ヨーロッパの「古代末期」と東アジアの比較」の3つのテーマに沿って一定の成果を得ることができた。また国内でも研究会を開催し、雑誌論文、学会発表、図書等による成果発信を続けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も①4、5世紀を転期とする中国社会の変容、②3~8世紀における中国文化の伝播と中心の拡散、③3~8世紀の中華の多様性と東アジアでの受容、④3~8世紀における仏教の浸透と中華の変容、⑤ヨーロッパの「古代末期」と東アジアの比較、の5つテーマに沿って研究を進めていく。研究会を継続し、上記の5つのテーマについての具体的かつ実証的な進めていくとともに、雑誌論文、学会発表、図書等による成果発信を続けていく。
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Research Products
(10 results)