2018 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive research for social complication in the early pastoral nomads and reconstruction of east-west trade routes in Eurasia
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18H00736
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (40403480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10570129)
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (20423048)
木山 克彦 東海大学, 清水教養教育センター, 講師 (20507248)
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
高浜 秀 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 客員研究員 (60000353)
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遊牧民 / 草原地帯 / 青銅器時代 / 匈奴 / 理化学的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は最初にドイツ考古学研究所を訪れ、草原地帯西部の鉄器時代を中心とした著作、論文を入手し、研究者と議論を行うことで情報収集に努めた。そして、調査計画に従って、8月にモンゴルのホスティン・ボラグ遺跡にて、モンゴル科学アカデミーと共同で発掘調査を行った。その結果、遊牧民出現と関連するヘレクスルの付属施設でウマの頭骨埋納を確認することができた。ヘレクスルはサヤン・アルタイからモンゴル高原中央部に広がる墓制であり、その東側については年代が確認されてこなかったが、今回の調査で年代測定も実施し、前10世紀末~9世紀初頭という結果を得た。これによって、同一の墓制がモンゴル高原の西部から中部にほぼ同時期に広がったことを確定することができた。また、この調査に付随して、ブリヤートのカウンターパートナーとモンゴルで打ち合わせし、新資料の提供と情報交換を行った。 9月後半と3月後半には理化学的分析調査をモンゴルで行い、モンゴル西北部の匈奴墓から出土したガラスの分析に従事した。その結果、匈奴は同時期でも墓地ごとに異なる産地のガラス製品を獲得していたことが明らかになり、匈奴の内部構造にも関わる成果を出すことができた。加えて、単于やそれに匹敵する王の墓では交易範囲としては最も遠いローマのガラスを獲得していたことが、理化学的分析から裏付けることができた。 これらの成果については、2月末に「社会変化とユーラシア東西交易:考古学と分析科学からのアプローチ」と題する国際シンポジウムを行い、冊子にまとめた。その中で、草原地帯の交易ルートの変化、草原地帯東部の草原の道の開拓の時期についても整理を行った。また、3月末には中国の復旦大学にて「漢代における草原と海上のガラス交易」として研究分担者とともに講演を行い、成果の周知に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度、予定していた新疆とブリヤートでのガラス調査と分析は、カウンターパートナーの都合により、実施することはできなかったが、その代わりにモンゴルでのガラス分析を集中して行うことができた。それにより、本研究が目的とするユーラシア東西交易路の復元に関しては、大きく進展したといえる。これまでの科研で行ったベトナムのガラス分析の成果と総合して考察すると、モンゴル高原に流通していたガラスと、それより東の朝鮮半島や日本列島に流通していたガラスは、産地が異なるとともにルートも異なっていたことを明らかにすることができた。 また、シンポジウムを通じてドイツの研究者と議論を重ね、草原地帯西側のラピス・ラズリなどの交易が草原地帯東部にほぼ及ばないことを確認することができた。その意味で匈奴時代にガラス製品が草原地帯の東西に流通するようになる状況は、新たな交易路の開拓として大きな意味があることがわかった。ただし、モンゴル高原でも南部の長城地帯は、ゴビ砂漠以北とは異なる交易網を古くから発達させており、本格的な騎馬遊牧民の装備の形成に関して重要な役割を担っている。そのため、来年度以降は新疆調査を含め、長城地帯での展開をより明確していく予定である。加えて、草原地帯西部でのガラスルートを解明するため、ウズベキスタンなどの中央アジアでの調査を実施していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的な研究の実施について、現状では大きな問題はない。海外調査では予定していた現地調査ができないことがしばしばあるが、複数の候補を用意しておくことで、若干当初計画とは異なりつつも円滑に研究課題を推進していけると考えている。 本研究は、各国での資料調査、モンゴルでの発掘調査、モンゴルと中央アジアでの理化学的分析調査を柱としている。発掘調査に関しては毎年モンゴル科学アカデミーと協力して行っているため、確実な実施が可能な状態にある。資料調査と理化学的分析に関しても、シンポジウムや国際学会で新しい人脈を作りつつ、多方向から計画を実施する準備をしており、上述した複数の候補の用意に努めている。 問題はガラス分析に資料している機材に不具合が生じる可能性である。不具合が生じた場合、分析調査は不可能になるため、計画を変更し、修理費を賄うなどの措置をとる必要ある。また、同じ機材をもつ研究者に知り合いがいるため、旅費を負担して協力を要請することもある。その場合、調査地を減らすなどして対応したい。
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Research Products
(41 results)