2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Tolerant City without Exclusion: The Production of Space between Resilient Revitalization and Urban Polarization
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18H00773
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水内 俊雄 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 教授 (60181880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 徹 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (40237467)
陸 麗君 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (70803378)
蕭 コウ偉 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (30796173)
垣田 裕介 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (20381030)
五石 敬路 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 准教授 (30559810)
菅野 拓 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (10736193)
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
コルナトウスキ ヒェラルド 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (00614835)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
キーナー ヨハネス 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任助教 (50825784)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セーフティネット / 居住支援 / インナーシティ / 地域再成 / 都市論 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本的な着眼点は。居住の最後のセーフティネットが、グローバル都市・地域においてどのように機能しているか、同時に都市の分極化が進む中で、ジェントリフィケーションを引き起こすような、都市空間への需要の都心部や周辺インナーシティでの高まりの最前線のキャッチを主眼に研究は進められている。日本および東アジア、そして欧州の事例の収集に努めてきた。特に日本国内においては、定住ではない暫住、暫居、滞在という観点での都市空間の存在が、都市の分極化の負の側面と和らげ、政策的にも財政負担を大きくしない柔軟なアプローチがとれることを、特に大阪の事例をベースに明らかにしてきた。具体には、こうした暫住、暫居が卓越する地域において、垂直的居住分布の著しいタワーマンションから、趣向をこらすワンルームマンション。これらが新築で供給されるのに対して、ハウジングの遊休資源利用やリノベーションを通じて仕事とセットになった社員寮的マンション、公的扶助に依拠した福祉受給者用のマンション、あるいは旺盛の需要の民泊の共有など、実にバラエティに富む都市空間の変容の実態に迫った。 東アジアや欧州都市の変容についても同様な地域の存在に関し、国際ワークショップなどでその実態を共有することを通じて、こうした都心部の変容にそれぞれの特徴や個性のあること、またジェントリフィケーションに対してどのような防波堤になっているのか、うまく身をかわして、ひいては居住のセーフティネットとしての機能をはたしているのかを、居住支援の中身に迫りながら明らかにしてきた。またそうした空間を埋め込んだ都市の持つ包容力を基礎にした、社会的合意形成と、政策提案の支えとなるような学知の発信と都市論の構想を、理論的にも追究している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究チームのアウトプットは、大阪市立大学都市研究プラザが発行するブックレットでもって迅速に公開している。昨年度のブックレットのアウトプットは、5チーム編成で臨んでいる本研究において、インフォーマルな雇用等をバネに新たな地域ビジネスやサービスハブを動かすその実態解明を行うチーム②と、居住福祉支援の実態を明らかにするチーム①とチーム②のアプローチを架橋しながら、包容力ある都市論を唱道し、都市カバナンスの社会的認知を高める役割を担うチーム③の成果が中心となった。 チーム②においては、新しい挑戦となったニューカマー中国人による商店街における地域小ビジネスの展開と、地域での中国人居住の進展を明らかにした。またチーム②では、仕事とハウジングがセットとなった社員寮の機能が、都市のハウジングのセーフティネットにもなり、また就労支援にも近い機能をはたしていることも、飯場調査を通じて部分的に明らかにした。また、日本語学校が教育のみならず、提供する寮と通じた地域との交流などで、外国人のその後の日本での居住におけるサービスハブ的機能を果たしているという当初分析対象になっていなかった実態に迫ることができた。 チーム③の包容力ある都市論の中構築について、ブックレットのアプトプットとして、具体に西成特区構想における、暫居をベースにした居住福祉支援のサービスハブという概念を、構想に組み込んだという社会実装的なアウトカムを生み出したこと。また定例研究会を通じて、日本のみならず東アジア、欧米の事例をカバーする、グローバル都市の最後のセーフティネット構築に関する比較実態調査の英語書籍の編集の最終段階に至ったことが、成果としてあげられる。同時に、現場的には定期的に開催している東アジア包摂型都市ネットワーク会議EA-ICNや、東アジア地域オルタナティブ地理学者会議EARCAGで、理論の精度を高め、実践の伝播に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究から生み出された新たな課題は、包容力、inclusiveだけに留まらない跳起の機能をどのようにして明らかするかにある。社会的脆弱層を安楽に受け止めるバネとしてのセーフティネットの効く包容力ある都市・地域の発展を、ジェントリフィケーションの荒波にもしたたかに対応する実践としてフォローする。また弾性力あるというバネの効いたトランポリンのように仕事によって、社会的に脆弱な層が跳起する地域の企てをさらにフォローしてゆく。都市論的には、多様なジェントリフィケーションの存在を明らかにし、単に対抗するのではなくそれも利用しつつ、どのように包容と跳起が可能なオルタナティブな都市論を構想するかに注力する。 このオルタナティブな都市・地域の空間構想について、以下の新しい視座を導入する。ジェントリフィケーションは、金と人、プロフェッショナルなスキルや情報のアトラクションと建造環境の向上を伴う。戦略としてこうしたジェントリフィケーションの対象となることを当面逃れつつ社会的脆弱の層を受け入れ続ける地域の、将来の変貌のシナリオを描くこと。そうした地域を失うかもしれないことに対して、セーフティネットをどのように異なる都市・地域で構築するかに資する研究が、今後の調査の鍵を握る。 第一に、典型的なジェントリフィケーションとは少々異なって、人と金が金融資本と直ちには結びつかない、エスニックなあるいは互助のネットワークの中で形成される地域形成のメカニズムにも着目する(チーム②)。もう一つは、そうした地域を失ったときにより広域的に包容力あるセーフティネット機能をもつサービスハブの形成と、そうしたハブを維持する社会的ファンドや集団の維持、育成、社会の合意形成に資する知見を社会に提示する(チーム①)。包容と跳起を可能とするジェントリフィケーションをしたたかにかいくぐるグローバルな都市・地域構想を推し進める。
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