2018 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ農民の生計における小規模な現金獲得活動と「在来の技術革新史」への視角
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18H00776
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 祐子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (30196779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 教授 (60340767)
坂井 真紀子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70624112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカ農民 / 現金獲得活動 / ジェンダー / 在来の技術革新史 / 生計活動 / 社会的再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度となる2018年度は、「在来の技術革新史」への方向性を定めるため、これまでの研究蓄積をふまえ、関連研究の広がりの把握と研究課題に迫る具体的な調査デザインの調整をおこなった。 現地調査では、タンザニア共和国ドドマ州のゴゴ農村において、現在の生業システムの全体像把握と現金獲得活動のバリエーション、生計における食料獲得と現金獲得活動の連関、またその変遷の概要の把握につとめた。生業における技術導入についてみると、植民地時代の諸施策、キリスト教ミッションや独立後の集村化政策、1980年代以降の国際協力プロジェクトのなかで持ちこまれた技術などが取捨選択されながら、生業の転機に結びついていることがみえてきた。また、小規模金融の導入や女性のエンパワーメントにかかわる近年の取り組みを組み合わせて、村びとの間で、現金、食料、モノを回す工夫が生みだされる事例が収集できた。さらに、重要な現金収入源となる季節湿地での野菜栽培を核に、自然栽培方法の試行も続いている。 他方、タンザニア首都移転加速に伴い、急速にドドマ都市域が拡張し、都市域に編入された農村では、深刻化した土地不足に直面した農民がより郊外の農村に新たに土地を購入したり、郊外に残った山林の伐採が急速に進むなど、資源利用と管理をめぐる状況も大きく変化している。この状況下での生業システムの変化に関する検討は今後の課題として重要である。 日本の農村および市や直売所などの調査も継続しており、現金経済下の「農」と生計、アフリカを土台に展開されてきた「小生産物」研究の視点の応用と枠組みの接続が期待できる。 こうした現地調査成果の共有や関連研究の知見の検討は、2回開催した課題研究会および関連課題研究会で栄養学の専門家などの参加を得ておこなった。また、2年度目以降の現地調査および研究交流にむけて、ザンビア大学との情報交換もおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定どおり、研究体制の整備をおこない、現地調査も予定通り実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度成果をふまえ、当初計画に沿ってタンザニアの基盤フィールドにおける現地調査を継続し、より詳細な情報を得て、生業システムの変容の具体像を明らかにする。また、予想外のスピードで進むドドマ市の都市域拡大に伴う生計へのインパクトをリアルタイムで把握することも新たな課題として浮上した。現状における農民の現金獲得活動機会の変化、生計戦略などについてできるだけ詳細な調査を行う。同時に、日本での調査成果をふまえた分析枠組みの検討と、接続可能性について検討する。調査対象農村での実践を通して研究成果の現地への還元方法についても検討を進める。 調査結果の分析・検討においては、栄養学、植物学など、課題に関連する分野の研究者との交流も視野に入れ、研究成果がさらに広がりをもちうる展開をめざす。
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Research Products
(17 results)